先日、WSTS(世界半導体市場統計)が2023年秋季の世界半導体市場予測を公表した。今回は、WSTSの予測を見ながら2023年の着地および2024年以降の市況の見通しについて私見を述べる。
WSTS(世界半導体市場統計)は2023年11月28日、2023年秋季半導体市場予測を発表した。それによると2023年の世界半導体市場規模は前年比9.4%減、2024年は同13.1%増と2桁成長へと回復すると予測した。WSTSでは、2023年6月の時点で2023年を同10.1%減と予測しており、今回はこれを若干上方修正したことになる。今回は、2023年の着地および2024年以降の市況の見通しについて私見を述べさせていただく。
ディスクリートの2023年市場規模は前年比5.8%増と予測している。2023年1月から10月までの実績を見ると同4.9%増、やや強気な予測に見える。小信号トランジスタ市場が年初から20〜30%減のマイナス成長を続けており、回復のメドがなかなか立たない。好調に推移してきたパワートランジスタも勢いにやや陰りが見え始めたので、この予測を下回る可能性がありそうだ。WSTSでは2024年を同4.2%増と予測しているが、現在の状況が続くようであれば、これも下回るかもしれない。パワートランジスタはクルマの電動化に不可欠なキーデバイスだが、中国のマクロ経済動向が懸念される現在、自動車市場にも悪影響が出そうな点が気掛かりである。中長期的には安定成長が見込めるディスクリート市場だが、足元の状況は良好とはいえない。
光半導体の2023年市場規模は前年比3.0%減と予測している。2023年1月から10月までの実績を見ると同1.7%減。この市場は約半分がイメージセンサーで占められており、こちらは2023年10月までの実績が同6.3%増とプラス成長を維持している。10月以降、スマホの生産が回復傾向にあり、イメージセンサーの需要も増加傾向になりそうなので、2023年の予測を上振れる可能性があるだろう。2024年の予測は同1.7%増となっているが、こちらももう少し強気で見ても良いのではないだろうか。ただし、スマホ1台当たりのイメージセンサー搭載数量がどう変化するかによって見通しが大きく変わるので、その動向を見守る必要がある。
センサーは同10.9%減という予測。2023年1月から10月までの実績を見ると同11.1%減、安定成長していた2022年までとは対照的に2023年は低迷している。このデバイスはスマホ向けと車載向けが多いことが特長だが、現時点では車載向けの需要が伸び悩んでいるように見える。2023年の予測は順当だろう。2024年の同3.7%増という予測にも違和感はないが、車載向けの需要が回復するかどうかがポイントだろう。
ICはアナログ、マイクロ、ロジック、メモリに類別される。
2023年のアナログ市場は同8.9%減という予測。2023年1月から10月までの実績を見ると同9.5%減、特に汎用アナログが同20%超のマイナスと低迷しており、回復のメドがなかなか立たない。ただし特定用途向けアナログの需要が回復傾向にあり、長らく低迷していたスマホ向けの需要が2023年10月以降回復基調にあるので、今後の動向に期待したい。2023年の予測は順当といえるが、2024年の同3.7%増という予測は、もう少し強気に見ることもできそうである。カギを握るアプリケーションはスマホだろう。
マイクロの2023年市場規模は同3.2%減という予測。2023年1月から10月までの実績を見ると同6.5%減、ただし2023年7月以降は同プラス成長が続いている。長らく低迷していたMPU市場が2023年8月からプラス成長に転じており、PCの生産が徐々に回復しつつあることを裏付けている。MCU市場は車載向けを中心に好調を維持している。2024年の同7.0%増という予測に違和感はない。
ロジック市場の2023年は同0.9%減という予測。2023年1月から10月までの実績を見ると同2.2%減、ただし2023年6月以降は同プラス成長が続いている。特に2023年10月の単月実績が同16.6%増と跳ね上がっている点に着目したい。2024年は同9.6%増と予測しているが、ロジック市場の約4割を占める通信機器向けをどう見るかがポイントである。WSTSの予測に違和感はない。
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