そこで東芝は、5V級高電位正極が電解液を分解するメカニズムを解析し、正極粒子表面で電解液が分解されてガスが発生することと、正極から溶出した金属が負極に作用してガス発生をさらに促進することを突き止めたという。
ここから同社は、正極の粒子表面を改質して金属の溶出を抑制する技術と、負極表面において溶出イオンを無害化する技術を開発した。この2つを組み合わせることで、5V級高電位正極の課題だったガス発生を、従来型の電解液を用いたまま大幅に抑制できるとする。
東芝はこの正極をニオブチタン酸化物負極と組み合わせ、リチウムイオン二次電池を開発した。酸化物負極には長寿命かつ高い安全性で急速充電が可能という特長があり、東芝も「SCiB」として製品化しているが、電位が高いため、電池の電圧が低くなってしまうという欠点がある。今回、電位の高い5V級高電位正極と組み合わせることで正極と負極の電位差を十分に確保し、電池電圧を改善できたという。
東芝が行った充放電サイクル試験による性能実証では、前述のガス発生抑制技術を適用していない電池にガス発生による膨張が見られたのに対し、同技術を適用した電池には膨張が見られなかった。出力電圧は平均3.15Vと、従来型のSCiBより高い。また、5分間で80%充電可能という急速充電性能も確認したという。高温環境での耐久性も高く、60℃環境で充放電を100サイクル行った後の容量維持率は99.2%だった。東芝 研究開発センター ナノ材料・フロンティア研究所 シニアフェローの原田康宏氏は高温耐久性について「5V級高電位正極で従来型電解液を使った電池として、傑出した性能だ」と自信を見せた。
東芝は2028年にこの技術の実用化を目指すとしていて、今後はさらなる高容量化に向けた検証などを行っていくという。
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