東京大学は、硬さと丈夫さを両立させた「電池用ゲル電解質」を開発した。肌や服に貼り付け可能なフレキシブル電池向け電解質材料としての応用に期待する。
東京大学物性研究所の橋本慧特任助教(当時)と眞弓皓一准教授、同大学大学院新領域創成科学研究科の伊藤耕三教授らは2023年11月、硬さと丈夫さを両立させた「電池用ゲル電解質」を開発したと発表した。肌や服に貼り付け可能なフレキシブル電池向け電解質材料としての応用に期待する。
フレキシブル電池に適用するためのゲル電解質には、優れたイオン伝導性に加え、硬さと粘り強さが求められる。しかし、これらはトレードオフの関係にあり、従来材料では両立させることが難しいといわれてきた。
曲げなどにより高分子が引き伸ばされると、内部の高分子鎖が伸び切って互いに集まり結晶化する。これによって材料の力学強度が向上することは既に証明されている。今回の研究では、この原理を適用し、伸長誘起結晶化を起こす環動ゲル電解質を開発した。
伸長誘起結晶化では、電解質内部の高分子鎖を均一に変形させることが重要である。このため、高分子鎖を環状分子によって連結させた環動網目を用いた。環動網目構造を適切に制御すれば、電解質中でも高分子鎖の変形を均一化できることが分かった。
相分離現象と伸長誘起結晶化を組み合わせたところ、70MPaという高い弾性率と、破壊エネルギーが約100MJm3という粘り強さを両立させたゲル電解質の開発に成功した。今回の実験ではリチウム塩を用いたため、イオン伝導率は10-5〜10-6S/cmとなった。
強磁性半導体が示す「特異な振る舞い」を解明
理研ら、「反強磁性体」の性質を超音波で確認
トポロジカル物質における表面超伝導を発見
物質表面の熱励起エバネッセント波を分光測定
キャパシターの絶縁破壊過程を電極越しに可視化
エネルギー密度1.6倍のリチウムイオン電池を開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング