東芝、マイクロ波遠隔給電システムを開発:無線LAN通信との共存が可能に
東芝は、無線LAN通信と共存できる「マイクロ波遠隔給電システム」を開発した。工場や倉庫などで用いられるIoTセンサーのバッテリーレス化が可能となる。現場での実証実験を重ねながら、2025年以降の事業化を目指す。
東芝は2023年12月、無線LAN通信と共存できる「マイクロ波遠隔給電システム」を開発したと発表した。工場や倉庫などで用いられるIoTセンサーのバッテリーレス化が可能となる。現場での実証実験を重ねながら、2025年以降の事業化を目指す。
マイクロ波遠隔給電システムは、2022年5月より「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」として、国内での利用が認められた。利用できる周波数帯は920MHzと2.4GHz、5.7GHzである。
東芝は、最も大電力を給電可能な5.7GHz帯を用いたマイクロ波遠隔給電システムの開発を行ってきた。ただ、マイクロ波給電の電波が、隣接する周波数を利用する無線LANに干渉するという課題があった。
従来技術と今回開発した高効率マイクロ波遠隔給電システムの概要[クリックで拡大] 出所:東芝
そこで今回、2つの技術を開発した。1つは周辺の無線信号の有無を検出し、給電処理を適切に制御することで電波の干渉を回避する「給電技術」である。これによって、無線LANが利用する5.5GHzから5.72GHzまでの広い周波数帯域において、周辺の無線信号を高い精度で検出することに成功した。無線信号を検出すれば、給電する方向を変更して無線LANとの干渉を回避できるという。
給電機の筐体は25×40cmで、信号処理回路や増幅回路、位相制御回路、64素子アンテナを一体化している。
開発した一体型給電機で、無線LAN信号を広い周波数帯(5.5〜5.72GHz)で検出した結果[クリックで拡大] 出所:東芝
もう1つは、受電アンテナの向きに依存せず、給電された電波から効率よく電力を取り出せる「受電技術」である。「水平偏波」および「垂直偏波」という2種類の電波を同時に受信し合成する。これによって受電効率を高めた。
実験では、給電機から1.5m離れた位置に受電機を配置し、給電システムを評価した。受電機のアンテナ角を回転させた時の平均受電電力は、垂直偏波のアンテナあるいは、水平偏波のアンテナで受電できる電力の平均値と比較し、約2倍の平均電力を受電できることを確認した。
受電アンテナの向きに依存せず、効率よく受電できることを実証[クリックで拡大] 出所:東芝
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