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コロナ禍で「サポートの真空地帯」に ブロードマーケットの声を拾う商社を目指すアフターコロナの調達網を探る(2)(2/4 ページ)

» 2024年02月07日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

商社が「顧客」から「パートナー」に

石合氏 エイブリックは、2016年にセイコーインスツルの半導体事業を分社化して創設されたメーカー(2018年に社名をエスアイアイ・セミコンダクタからエイブリックに変更、2020年にミネベアミツミと経営統合を行い同社グループとなる)ですが、以前は、どちらかというと商社(代理店)に依存している体質でした。代理店が「顧客」であり、市場やエンドユーザーからの要望や意向も代理店経由で伝わってきました。

 ただ、それだとどうしても価格競争の話になりがちで、われわれはそこに危機感を覚えたのです。そこで当社の営業体制も見直し、代理店と役割や守備範囲をしっかり分けるようにしました。とはいえ、目指すところは「同じ顧客」なので、現在は当社にとって代理店は「パートナー」であると考えています。

――現在は、半導体商社にどんな役割を期待していますか。

石合氏 伝統的な商社と、通販を手掛ける商社については、期待するものが異なります。前者に対しては新規顧客開拓を期待する一方で、後者にはマーケティング機能に期待しています。われわれの製品が、どの分野のどのメーカーに採用されているのか。そうしたフィードバックをもらうことで、顧客の開発動向を読み取ることができます。当社のように、多品種を展開している企業にとっては、とてもありがたい情報です。

 コアスタッフさんは、通販と、対面での営業活動を組み合わせたアプローチを展開されていますよね。

戸澤氏 そうです。われわれは「ハイブリッド」と呼んでいますね。カタログディスティ(通販のエレクトロニクス商社)だけでは、トップクラスのグローバルなカタログディスティとの真っ向勝負は規模の点で難しいものがあります。一方で、対面での営業や顧客対応がメインとなる“アナログ”のアプローチでも、同様に大手エレクトロニクス商社には一生勝てない。

 では、われわれの強みが何かというと、デジタルのプラットフォームを持ちつつ、アナログでも対応するという、「ハイブリッド」な商社であることです。

「マーケティングができる商社」

――デジタルのプラットフォームの強みを、あらためてお聞かせください。

コアスタッフ社長の戸澤正紀氏 コアスタッフ社長の戸澤正紀氏

戸澤氏 やはり「データ」になると思います。われわれの場合、「顧客になるかどうか」を見抜くのではなく、「顧客が今どのフェーズにいて、何をやっているのか」を見抜かない限り、ビジネスを持続していくことが難しいのです。それ故、サイトのユーザーが今、何を検索しているかが全て分かるということは、最大の強みでもあります。

 当社が取り組んでいるのは、まずは、できるだけ多くの設計者に登録してもらうことです。そして、登録していただいた設計者の動きを長期的に見ていくのです。1〜2年のスパンで見ると、ある部品を、これまで月に数回程度した検索していなかったのに、急に月に何十回、何百回と検索し始める。例えば、やたらと各メーカーのアンプを検索していると、「これは比較しているな」と。つまり、新製品の開発がスタートしたのだなと推測できるわけです。

石合氏 なるほど、そういうことですね。

戸澤氏 回路設計のBOM(Bill of Materials)を作成する前の段階でこうした動きをキャッチできれば、必要な部品を必要なところに、最適なタイミングで販売できます。このように設計者の検索データを定点観測し、設計が始まるタイミングで、アナログ的に営業活動を進めます。顧客が最もその部品を必要としている時期に営業を行うので、定期的な顧客訪問を続けるよりも効率的だと感じています。ただこれも、2023年からようやく取り組み始めたことです。

石合氏 今、戸澤さんがおっしゃったことが、まさしくわれわれが商社に対して望んでいることですね。コロナ禍では、インターネットの強さをあらためて認識しました。ネットがあれば、世界のどこからでも部品が買えますよね。つまり、「買い手がどこで何を買ったか」という情報を入手できれば、それがそのままマーケティングになる。われわれが自分たちでやろうと思ったら、とても手間がかかってしまうところをフォローしてもらえることになります。商流の選定という観点では、Eコマースの活用は今後最も戦略的に注力していくところだと考えています。“マーケティングができる商社”というのが、これからわれわれに必要なパートナーになってくるだろうと思いますね。

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