新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるサプライチェーンの混乱を経験した半導体/エレクトロニクス業界では、商社とサプライヤー、メーカーの関係性は少しずつ変化している。今回は、コアスタッフの社長である戸澤正紀氏と、アナログ半導体企業のエイブリックで取締役会長を務める石合信正氏が、それぞれ商社とサプライヤーの立場から、コロナ後の調達網について語った。
パンデミックによる部品不足は多くの分野で落ち着き、2023年は一転して過剰在庫も見られるほどだった。一方、世界的な経済悪化や国際紛争などが要因で、半導体/エレクトロニクスのサプライチェーンの安定性は、コロナ禍とは異なる背景で脅かされる状態が続いている。こうした「アフターコロナのサプライチェーン」の現況を、業界関係者はどう捉えているのか。今回は、半導体/電子部品の通販サイト「CoreStaff ONLINE」を運営するコアスタッフの社長を務める戸澤正紀氏と、アナログ半導体メーカーのエイブリックで取締役会長を務める石合信正氏に話を聞いた。
――この数年、「とにかくモノ(部品)がない」という状態が続いていたと思いますが、エイブリックではコロナ禍の状況はいかがでしたか。
石合信正氏 当社の場合、開発については着々と進みました。設計開発のターゲットを、画像診断などの医療機器やヘルスケア、自動車といった、将来性のある成長分野に絞り込んだのですが、それが功を奏しました。製品設計の多様化に伴い、人材を含めたリソースの再配置を行うなど、柔軟な戦略で乗り切ることができたと思っています。
実際に、コロナ禍だけを切り取って考えると、開発面で大きな棄損(きそん)は出ていません。テレワークも、コロナ禍以前から会社の方針として既に開始していましたから、大きな混乱はありませんでした。販売促進(販促)の点では、通販が伸びましたね。結果として、開発と販促の双方において、コロナ以前よりも効率と成果を重視するようになったと思います。
――戸澤さんは、現状をどうご覧になっていますか。
戸澤正紀氏 前提としてお話しておきたいのが、日本の顧客はとにかく裾野が広いのが特徴です。スマートフォンやPCのメーカーこそ少ないですが、それらのティア1、ティア2といった、いわゆる産機系のメーカーが多数存在します。コロナ禍に限った話ではありませんが、そうしたメーカーが、先ほどのエイブリックさんのお話のように、生産性向上に目が向いてくると、より上位のレイヤーを重視するようになります。
そうなると、大手の伝統的なエレクトロニクス商社が、そういった上位レイヤーのメーカーの製品も扱うようになる。すると、下位レイヤーに位置するメーカーのサポートがどうしても手薄になってしまう。つまり、最も裾野が広い「ロングテールビジネス」(一つ一つの生産量は少なくても足し合わせると巨大な規模になる)の部分が、ほとんど手つかずの状態(サポートがない状態)になってしまうわけです。そこを、Eコマースのプラットフォームも在庫も持っているわれわれがケアすることが増えてきたと実感しています。
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