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コロナ禍で「サポートの真空地帯」に ブロードマーケットの声を拾う商社を目指すアフターコロナの調達網を探る(2)(4/4 ページ)

» 2024年02月07日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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ブロードマーケットの“声”をサプライヤーに届ける

石合氏 顧客とのクオータリーミーティングに出席した際によく感じていたのが、そうした会議には、開発現場の状況や実態をしっかりと把握している参加者が、なかなかいらっしゃらないということです。ですから、戸澤さんがおっしゃっていた、マーケティングの機能やハブの機能を、商社側から提供してもらえるのは非常にありがたい。

 われわれとしては、「製品がいくらで売れた」だけでなく、いただいた情報に対して有効性が検証されたら、それに対価をお支払いするという形でもいいのです。要は確度の高い情報がほしい。市場開拓につながる“ドアオープナー”となる機能を、商社に期待しているところもあります。

戸澤氏 当社は販売だけでなく、製品開発の領域でもサプライヤーとコラボさせていただいています。エイブリックさんにも関わってくるような、アナログフロントエンド(AFE)の開発を例に挙げると、製品開発マトリックス上にはまだ存在していないロードマップが、必ずあると思うんですよね。全てを開発するのは、リソース的に現実的ではありません。では開発のプライオリティはどうやってつけるのか。ティーチングカスタマーがいるような場合は問題ないのですが、AFEだと、まさしくターゲットがブロードマーケットになる。そのブロードマーケットのヒアリング機能を、われわれは持っています。サプライヤーの開発部署と直接意見を交換し、知りたい情報をお聞きして、その後われわれがブロードマーケットの関連メーカーにヒアリングを行う。そのヒアリング結果を、サプライヤーにフィードバックするという仕組みです。

 つまり、「今後、サプライヤーが開発するであろう分野でどんな製品が売れているのか」という情報を、メーカー各社の開発動向を含めて提供できるわけです。そうした情報は、サプライヤーの開発者や設計者の方が見れば、「自社の製品開発マトリックスのどこに位置すべきものなのか」というのは、恐らく一発で分かるはずです。

 実際にこんな例があります。オペアンプを手掛けるサプライヤーが、技術トレンドの観点から当然次の新製品は「レイルツーレイル(Rail to Rail)構成を開発すべき」と考えていたところ、当社のヒアリングにより、実はもっと汎用的なオペアンプのニーズが高いことが分かったのです。そのサプライヤーは、結果的に開発の方向を修正しました。

石合氏 情報を「双方向」に、提供し合えるということですね、それはとてもいい。「双方向」というのは非常に重要なキーワードだと思います。

――コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱は、半導体商社とサプライヤーの関係性にも、少なからず変化をもたらしたといえそうです。今回は、ありがとうございました。

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