今回は、IntelとAMDのモバイル向けCPUの新製品を分解する。Intelの「Core Ultra」(Meteor Lake世代)はチップレット構成、AMDの「Ryzen 8000G」(Zen 4世代)はシングルシリコンになっていて、両社のこれまでの傾向が“逆転”している。
IntelとAMDは2023年12月、2024年1月に、それぞれ新プロセッサ(CPU+GPU+NPU)を発売した。Intelは「Meteor Lake」世代、AMDは「Zen 4」世代のプロセッサとして発売されていて、2024年1月以降、多くのPCに採用され発売されている。2024年のPCの最大訴求ポイントは「AI(人工知能)パソコン」。プロセッサ内にNPU(Neural Processing Unit)を搭載することで、専用演算が可能になる。CPUなどの従来の演算方式に対し、高速かつ低消費電力で処理が可能になったとアピールしている。小さな演算器(INT8やFP16)を多数搭載することで処理を実行する構造になっている。
2022年以降、生成AIが目を見張る成長を遂げていて、NVIDIAやBroadcomなどの半導体メーカーや、HBM(広帯域幅メモリ)などの技術がけん引役になっているが、AIブームではエッジ側も著しい進化を遂げている。スマートフォンでは、AI演算を強化したプロセッサとして、Qualcommが「Snapdragon 8 Gen 3」を、MediaTekが「Dimensity 9300」を、Samsung Electronicsが「Exynos 2400」を相次いでリリースした(テカナリエは、3チップともに開封解析を完了している)。プロセッサのAI機能強化に伴い、DRAMも高速化/大容量化し続けている。PC向けではIntelとAMDがAI機能を前面に押し出している。AI機能はIntelでは「Intel AI Boost」、AMDでは「Ryzen AI」と命名されている。
図1は2023年12月にIntelから発売されたMeteor Lake世代の3チップ(モバイル向けCPU)、「Core Ultra 5」「Core Ultra 7」「Core Ultra 9」(ロー/ミドル/ハイ)のパッケージの様子である。3チップともにパッケージ端子は同じ。ローはCPU14コア、GPU7コア、ミドルハイはCPU16コア、GPU8コアとなっている。ミドルとハイの差はCPUの周波数で、ミドルでは最大4.8GHz、ハイは5.1GHzだ。外観からもロー/ミドル/ハイは同じシリコンを流用したものであることが分かる。
図2はCore Ultraのシリコン部を拡大したもの。長方形の1シリコンで構成されるモノリシック構造ではなく、複数のシリコンを組み合わせるチップレット構造になっている。4種の機能シリコンの下部にはシリコンインターポーザー(シリコン同士を接続)が置かれている。シリコンインターポーザーまで合わせると5シリコンがパッケージ内に収まっているわけだ。シリコンインターポーザーはほぼ配線だけで構成されていて、微細で複雑なトランジスタを形成する必要がないので、Intelの22nmプロセスで製造されている。機能シリコン4種は、「GPU Tile」「SoC Tile」「CPU Tile」「IO Tile」と命名され、ネーミング通りの機能がそれぞれ搭載されている。
図3はCore Ultraの4つの機能シリコンを分離し、配線層を剥離して内部を明らかにした状態だ。CPUは高性能6コア、高効率8コアで構成され、IOはThunderbolt 4とPCI Express 4/5で構成されている。GPUは8コアで構成されている。CPU、GPU、IOはほぼ単一機能だ。一方でSoCはSystem On Chipのネーミング通り、多くの機能を搭載する。NPU、メディアプロセッサ、Wi-Fi通信コントローラー、HDMIなどの端子および制御、さらに高効率CPUよりも機能を絞ったCPU2基が搭載されている。シリコンの製造も「Intel 4」、TSMCの6nmおよび5nmと多岐にわたる。
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