2024年4月18日、TSMCが2024年第1四半期(1〜3月期)の決算を発表した。ファウンドリー業界で独り勝ち状態のTSMCには、ハイエンドプロセスを中心に需要が集中している。近年の同社決算を振り返り、TSMCの現状や見通しを考えてみる。
TSMCは2024年4月18日、2024年第1四半期(1〜3月期)の決算を発表した。売上高は188.7億米ドル、ガイダンス(180〜188億米ドル)の上限値を若干上回っており、ポジティブな内容だったといえる。2024年第2四半期の売上高見込みは180〜188億ドルと横ばいを見込んでいる。ファウンドリー業界で独り勝ち状態の同社には、ハイエンドプロセスを中心に需要が集中しており、「もっと上振れても良いのでは」といった声も聞かれるが、同社の現状や見通しについて、ここで確認しておこうと思う。
図1は、TSMCのアプリケーション別四半期売上高の推移を示したものである。2023年第4四半期に売上高の43%を占めていたスマホ向けが落ち込んでいるが、これは季節要因によるところが大きい。具体的にはAppleの年末商戦対応が第4四半期の売り上げを押し上げ、第1四半期にはその反動が出ている、ということになる。スマホ向けは減少したが、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けが第4四半期の同43%から第1四半期には同46%と比率を伸ばしている。この立役者は何といってもNVIDIAで、データセンター向けAIプロセッサの需要はまだまだ伸びが期待できそうだ。グラフからも分かるように、TSMCの売り上げは、スマホ向けとHPC向けだけで全体の8割以上を占めている。スマホではApple、HPCではNVIDIAが代表的な顧客であり、技術的な切磋琢磨を行う上で重要なパートナーでもある。
次に、TSMCのプロセス別四半期売上高の推移を見てみよう。図2を見ると、2023年第4四半期から2024年第1四半期にかけて3nmプロセスの売り上げが下がっている。これはApple向けの需要が減少したことが原因だろう。TSMCは最先端プロセスをまずApple向けに導入し、iPhoneシリーズの大量生産を実現する上で重要な役割を果たしている。Samsung Electronicsのように、自力でスマホ用SoCを開発し、自社のファウンドリーラインでそれを量産し自社製品であるGalaxyシリーズに搭載する、という自前主義とは対照的で興味深い。
ちなみにNVIDIAは5nmプロセスから派生した4nmプロセスを採用していて、こちらは横ばい、すなわち、ほぼフル稼働状態で動いている。生産数量ではAppleには及ばないものの、NVIDIAもTSMCの一部の生産能力を使い切っている側面がある。
それを示す上で注目すべきデータとして、TSMCのウエハー出荷数量の推移がある(次ページ図3参照)。
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