東京大学らの研究グループは、ドナーとアクセプターの分子軌道を混成することで、交互積層型電荷移動錯体の高伝導化に成功した。大量合成が可能な塗布型有機伝導体材料として、有機電子デバイスへの応用に期待する。
東京大学らの研究グループは2024年4月、ドナーとアクセプターの分子軌道を混成することで、交互積層型電荷移動錯体の高伝導化に成功したと発表した。大量合成が可能な塗布型有機伝導体材料として、有機電子デバイスへの応用に期待する。
ドナー分子とアクセプター分子から成る交互積層型電荷移動錯体は、電荷輸送に携わるキャリアが少なく、これまで「電気がほとんど流れない」といわれてきた。その原因は、電荷移動量(δ)が中性領域(0〜0.4)あるいはイオン性領域(>0.75)にあるためだ。一方で、「中性−イオン性の境界領域にある電荷移動錯体を合成すれば、電気はよく流れるのではないか」ともいわれてきた。
研究グループは近年、電子が豊富なドナー分子としてドープ型ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のオリゴマーモデルを開発した。この二量体(2O)および、酸素/硫黄原子置換体(2S)は、電子が不足した「フッ素置換テトラシアノキノジメタン類(F4とF2)」に対して、中性−イオン性の境界領域に錯体を構築するのに有効な電子構造であることを発見した。
そこで今回は、ドナー「2O/2S」とアクセプター「F4/F2」を有機溶媒中でそれぞれ混合し、数日かけて濃縮した。これにより、針状をした4種の電荷移動錯体単結晶が得られた。X線単結晶構造解析の結果、これらの錯体はドナーとアクセプターが交互に等間隔で積層した一次元構造であることが判明した。しかも、電荷移動量が中性−イオン性境界付近にあることが分かった。特に、2S-F4の電荷移動量は「0.69」で、狙っていた中性−イオン性境界に位置しているという。
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