ある海外企業の例を紹介しよう。ある医療機器製造企業が新しいシステムを開発していたのだが、開発が完了し、その電子機器の認定をいざ取得する段階になったとき、電子機器のコアとなる半導体製品が、突如製造中止となってしまった。しかも販売前の製品でもあることから、再度設計からやり直すこともできない状況にあった。そこで、オリジナル半導体メーカーから認定を受け、製造中止となる半導体製品を再生産できる企業に依頼し、再生産された半導体製品を継続的に供給してもらうことで事なきを得た。その企業は、無事に製造を継続することができたのである。
こうした事例から分かるように、開発段階で半導体製品を選定する際には、その半導体製品を採用した製品が、どれだけ早い段階で製品の再設計/再認定が必要になるかを検証することが重要だ。この半導体の製造中止の管理は、開発/認定にかかる期間が長い顧客にとっては、特に重要な問題となる。
装置やシステムの開発段階で使用する半導体製品を選択する際、適切な半導体製品技術とそれを供給する供給元を選ぶことは、製品生産の長期的な稼働に劇的な影響を与える可能性がある。ここで、最もコストの低い供給元が、長期的な供給にとって最善な選択になるとは限らない。また、予期せぬ自然災害や市場の不安定さ、製品/企業の買収など、何年も前から予想できないこともあり、長期的に在庫の確保を確実に保証することは難しい。だが、どのような供給元に対しても、長期的な可用性に対するコミットメントを尋ねることは必須だろう。その上で、製造中止(EOL)を経て、保証された長期的な供給、そして再生産へと移行できるプロセスを持つパートナーを見つけることが重要だ。製品認定の時間、製品ライフサイクル、そして耐用年数が長い場合、いずれその製品に使用している半導体製品の製造中止に直面することは間違いない。そこで、考慮すべき点について考えてみると、以下のような項目が挙げられる。
次に、製造中止に伴うコストとリスクを理解し、モデル化することが重要である。半導体製品の製造中止は、決して購買だけの問題だけでなくさまざまな部署に関係することであり、“事後”に対処すべきものではない。そこで、以下に留意点を挙げてみたい。
さまざまなリスクに対して万全の対策をしている組織では、多部門にわたり熟練したスタッフを、半導体製造中止の管理の専任担当として配属させていることが多い。つまり、調達担当者、半導体製品のエンジニア、設計者および、プログラムマネジャーによる予防のための計画により、コストやリスクを削減または排除することができる。“悪魔は細部に宿る”といわれるように、コストの分析はラインごとに全体を網羅する形で行う必要があるが、それでも見落とす可能性はある。その極端な例として、わずか1セントのトランジスタ製品が、予期せぬ製造中止となり、継続的な入手はもちろんのこと、代替品の入手やわずかな変更ができないために、製品販売計画そのものを停止せざるを得ない状況に陥ってしまったという事例もある。
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