下図がApollo510の概要だ。Hanson氏は、Apollo510について「『あらゆる場所にインテリジェンスを』というわれわれのビジョンに徹底的に重点を置いた、最高性能の製品だ」と説明。Apollo510はTSMCの超低消費電力22nmプロセスで製造し、Apolloシリーズで初めて、Arm Cortex-M55を採用、最大250MHzの処理速度を実現している。M55が備えるArm Helium技術は、1サイクル当たり最大8個のMACをサポートし、半精度、全精度、倍精度の浮動小数点演算を実行できるため、「一般的な信号処理演算に加えてAI処理にも最適だ」と説明している。
さらにHanson氏は「ウェアラブルをはじめ、あらゆるユースケースでグラフィックスの重要性が増しているのは明らかだ」とも言及。Apollo510では、超低消費電力の組み込み向けGPU IP(Intellectual Property)を手掛けるThink Silicon(Applied Materialsの子会社)のベクターグラフィックスアクセラレーション搭載2.5D GPUを採用。前世代Apollo4シリーズのApollo4 Plusファミリーと比較し、全体的なパフォーマンスを3.5倍向上しているという。また、通常、最も消費電力の低い製品に搭載されるという、「MiP(Memory in Pixel)」ディスプレイもサポートしている。
メモリ容量も前世代品から増えていて、4Mバイト(MB)のオンチップNVMと3.75MBのオンチップSRAMおよびTCM(密統合メモリ)を搭載した。Hanson氏は、「フラッシュメモリなどは先端プロセスでは同一チップ上に混載することが困難で、フラッシュメモリは別チップで構成するという競合が多い。パッケージ内に搭載する場合はあるが、それでもオフチップだ。そうした場合、狭いインタフェースを介することから多くの電力を消費することになる」と語り、Apollo510の優位性を強調していた。
Apollo510では大規模なニューラルネットワークモデルやグラフィックスアセット向けに高帯域幅のオフチップインタフェースも多数搭載、それぞれ最大500MB/秒のピークスループットと300MB/秒以上の持続スループットが可能となっている。
この他、セキュリティ面も強化。Ambiqの「secureSPOT」プラットフォームに、Arm TrustZoneテクノロジーやPUF(物理的複製不可能機能)、不正使用防止OTP、セキュアな周辺回路などを統合。「これらの機能強化により、設計者は信頼できる実行環境(TEE)を確立して、安全で堅牢なアプリケーションを開発し、製品をより迅速に拡張することができる」と説明している。
なお、AmbiqではAIに焦点を当てた独自のソフトウェア開発キットで、同社がADK(AI Development Kit)と呼ぶ「Neural Spot」も提供していて、高効率の推論を用意に実現することが可能となっている。
Apollo510は既にサンプル提供中で、2024年第4四半期に一般向けの供給を開始する予定。ウェアラブルやデジタルヘルス、スマートホームなどの他、FA(ファクトリーオートメーションなど)幅広い市場での展開を狙っている。また、Apollo5シリーズとしてはBLE(Bluetooth Low Energy)対応の製品なども開発中で、ポートフォリオの拡充を進めていく方針だという。
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