WSTS(世界半導体市場統計)が2024年および2025年の世界半導体市場予測を発表した。2024年の成長率は前年比16.0%と予測されているが、条件次第ではもっと強気な予想も可能ではないか。今回は、これまでの状況を踏まえながら今後の市況見通しについて考える。
WSTS(世界半導体市場統計)は2024年6月4日、2024年および2025年の世界半導体市場規模予測を発表した。前回の予測(2023年11月)では、2024年の成長率を前年比13.1%増と予測していたが今回、これを同16.0%増に上方修正した。2024年4月までの半導体市況を見る限り、これまでの出荷実績は同15.2%増と回復基調にある。予測の上方修正は納得できる措置といえるだろう。2025年については同12.5%増と2年連続の2ケタ成長を予測している。ただ、筆者としては、条件次第でもっと強気な予測も可能ではないか、と見ている。ではその条件とは何なのか。これまでの状況を踏まえながら、今後の半導体市況見通しについて考えてみたいと思う。
WSTSは、半導体市場を「ディスクリート」「光半導体」「センサー/アクチュエーター」「IC」の4つの製品分野に分け、それぞれの市場規模実績、予測を発表している。それぞれの予測をみていく。
ディスクリートについては2024年成長率を前年比7.8%減と予測している。2024年1月から4月までの実績を見ると同13.9%減であり、やや強気な予測に見える。小信号トランジスタ市場は、4月までの実績が同16.8%減、パワートランジスタ市場は同14.1%減、いずれも2ケタのマイナス成長に落ち込んでいる。小信号トランジスタ市場は2022年9月以降ずっとマイナス成長が続いており、いまだに回復のめどが立っていない。パワートランジスタ市場は好調に推移してきたが、2024年1月以降マイナス成長が続いている。クルマの電動化に不可欠なパワートランジスタの需要が失速したのは、自動車業界からの過剰発注の反動によるもので、こちらも2024年内は低迷が続く可能性が高い。2024年のディスクリート市場は、2ケタのマイナス成長が避けられないのではないだろうか。2025年の予測は同7.7%増となっているが、クルマの電動化による需要は堅調に推移することが予測できるので、この予測に違和感はない。
光半導体は同1.0%減と予測している。2024年1月から4月までの実績を見ると同5.2%減。この市場は約半分がイメージセンサーで占められ、そのイメージセンサーの4月までの実績は同11.7%増で推移している。スマホ向け需要が堅調に推移している現状の傾向から考えると2024年はプラス成長を期待できるのではないだろうか。2025年の予測は同3.5%増となっているが、スマホ1台当たりのイメージセンサー搭載数量がどう変化するかによって見通しが大きく変わるので、その動向を見守る必要がある。
センサー/アクチュエーターは同7.4%減という予測になっている。2024年1月から4月までの実績を見ると同12.9%減、2023年1月以降ずっとマイナス成長が続いている。車載向け需要は好調だったが、スマホ向けの低迷をカバーしきれなかったと推察できるが、現時点ではスマホ向けが堅調で車載向けが低迷しているようである。2024年が1ケタのマイナス成長という予測には同意できる。2025年の予測は同6.3%増、スマホ向けの需要が復活すればもっと高い成長が期待できそうだが、予断は禁物だろう。
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