理化学研究所(理研)らによる国際共同研究グループは、高いエネルギー変換効率(PCE)を保ちながら、伸縮性を向上させた「有機太陽電池」を開発した。環境エネルギー電源として、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルなどの用途に向ける。
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員や染谷隆夫チームリーダーらによる国際共同研究グループは2024年6月、高いエネルギー変換効率(PCE)を保ちながら、伸縮性を向上させた「有機太陽電池」を開発したと発表した。環境エネルギー電源として、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルなどの用途に向ける。
有機太陽電池は、基板上に「透明電極」と「上部電極」があり、その間に「発電層」や「正孔輸送層」「電子輸送層」を積層している。このなかで、透明電極だけは透明性、導電性、伸縮性の全てを満たす材料がこれまでなかったという。
研究グループは今回、厚みが10μmのポリウレタン基板上に透明電極、正孔輸送層、発電層、上部電極を積層した伸縮性有機太陽電池を試作した。透明電極は、「ION E(4-(3-エチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルホン酸)」を添加した導電性高分子材料「PEDOT:PSS」を、塗布成膜手法によってポリウレタン基板上に形成した。
ION Eの添加量が異なる透明電極について、その特性を調べた。5mg/mLのION Eを添加した透明電極は、80%の引張ひずみで抵抗は初期値の2倍未満となった。ION Eを含まない透明電極は、40%の引張ひずみで抵抗が初期値の122倍となった。これにより、ION Eを添加した透明電極は、引張ひずみが増加しても抵抗の増加を抑えられることが分かった。
また、透明電極の亀裂発生ひずみ(COS)値は、ION E濃度の増加に伴って増えることを確認した。具体的には、ION Eの添加量が2mg/mLで50%、5mg/mLで120%、10mg/mLで150%となった。
ポリウレタン基板と透明電極の界面における特性も評価した。ION E添加なしとION Eを5mg/mL添加した透明電極について、2次元接着力を測定した。ION Eを含む導電性PEDOT:PSSの接着力は5.66nNであった。これに対し、ION Eを含まない導電性PEDOT:PSSの接着力は1.15nNとかなり低かった。
「力−変位曲線」から界面接着力を調べた。これにより、ION Eを含むサンプル品に適用された力が、ION Eを含まないサンプル品に適用された力の2倍以上であることが分かった。
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