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高効率で伸縮性を向上させた有機太陽電池を開発発電層と透明電極に新材料を採用(1/2 ページ)

理化学研究所(理研)らによる国際共同研究グループは、高いエネルギー変換効率(PCE)を保ちながら、伸縮性を向上させた「有機太陽電池」を開発した。環境エネルギー電源として、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルなどの用途に向ける。

» 2024年07月08日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

ウェアラブルデバイスなどに適した環境エネルギー電源

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員や染谷隆夫チームリーダーらによる国際共同研究グループは2024年6月、高いエネルギー変換効率(PCE)を保ちながら、伸縮性を向上させた「有機太陽電池」を開発したと発表した。環境エネルギー電源として、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルなどの用途に向ける。

 有機太陽電池は、基板上に「透明電極」と「上部電極」があり、その間に「発電層」や「正孔輸送層」「電子輸送層」を積層している。このなかで、透明電極だけは透明性、導電性、伸縮性の全てを満たす材料がこれまでなかったという。

 研究グループは今回、厚みが10μmのポリウレタン基板上に透明電極、正孔輸送層、発電層、上部電極を積層した伸縮性有機太陽電池を試作した。透明電極は、「ION E(4-(3-エチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルホン酸)」を添加した導電性高分子材料「PEDOT:PSS」を、塗布成膜手法によってポリウレタン基板上に形成した。

伸縮性有機太陽電池の構造および、電極材料と活性材料の化学構造 伸縮性有機太陽電池の構造および、電極材料と活性材料の化学構造[クリックで拡大] 出所:理研

 ION Eの添加量が異なる透明電極について、その特性を調べた。5mg/mLのION Eを添加した透明電極は、80%の引張ひずみで抵抗は初期値の2倍未満となった。ION Eを含まない透明電極は、40%の引張ひずみで抵抗が初期値の122倍となった。これにより、ION Eを添加した透明電極は、引張ひずみが増加しても抵抗の増加を抑えられることが分かった。

 また、透明電極の亀裂発生ひずみ(COS)値は、ION E濃度の増加に伴って増えることを確認した。具体的には、ION Eの添加量が2mg/mLで50%、5mg/mLで120%、10mg/mLで150%となった。

導電性PEDOT:PSSの特性 導電性PEDOT:PSSの特性[クリックで拡大] 出所:理研

 ポリウレタン基板と透明電極の界面における特性も評価した。ION E添加なしとION Eを5mg/mL添加した透明電極について、2次元接着力を測定した。ION Eを含む導電性PEDOT:PSSの接着力は5.66nNであった。これに対し、ION Eを含まない導電性PEDOT:PSSの接着力は1.15nNとかなり低かった。

 「力−変位曲線」から界面接着力を調べた。これにより、ION Eを含むサンプル品に適用された力が、ION Eを含まないサンプル品に適用された力の2倍以上であることが分かった。

導電性PEDOT:PSSからなる透明電極とポリウレタン基板の界面における特性評価 導電性PEDOT:PSSからなる透明電極とポリウレタン基板の界面における特性評価[クリックで拡大] 出所:理研
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