NTTは2024年9月3日、既存のファイバー上で集中光増幅器のみを用いて、毎秒100テラビット(100Tbps)を超える伝送容量で800km以上の長距離光増幅中継伝送に「世界で初めて」(同社)成功したと発表した。新たに開発した超長波長帯一括変換技術を用いて実現したものだ。
NTTは2024年9月3日、新たに開発した波長帯一括変換(WC)技術を適用することで、既存のファイバー上で集中光増幅器のみを用いて、毎秒100テラビット(100Tbps)超の伝送容量で800kmの長距離光増幅中継伝送に「世界で初めて」(同社)成功したと発表した。
基幹光ネットワークで使われている光ファイバー伝送システムでは、異なる波長のデジタルコヒーレント光信号を多数束ねて光のまま増幅中継し、目的地まで敷かれた光ファイバー上を長距離伝送している。日本では、基幹光ネットワークの大動脈である東名区間(東京と愛知間)の約500km以上を光増幅中継できる性能が求められている。
現在では、約4THzの光増幅帯域(波長資源)をもつ光増幅器(EDFA)が中継器として使われ、C帯/L帯と呼ばれる光帯域が実用化されている。これまで、C帯/L帯の送受信機を高度化することで光ファイバー伝送システムを大容量化してきたが、理論限界に近づきつつある。さらなる大容量化のためには、新たな波長帯への帯域拡大が必要になっている。
波長資源をC帯の短波長側(S帯)に拡大した場合、光帯域14.1THzでも最長伝送距離が400kmにとどまり、それ以上の長距離化が難しかった。一方、L帯の長波長側(U帯)は、従来帯域に比べて光ファイバーの損失が大きいという課題があった。光ファイバーの曲げ損失や、光ファイバーの素材であるシリカガラスの特性による赤外吸収損失が増えていく波長帯だからだ。また、新たな波長帯域を伝送に用いるには、その帯域用の送受信機や光増幅中継器などの伝送装置を新規開発する必要があるが、U帯向けの伝送装置については、既存の材料では開発することが難しい。
加えて、帯域10THzを超える広帯域波長多重信号が光ファイバー上を運搬すると、短波長側から長波長側の信号に光パワーが遷移する「誘導ラマン散乱」と呼ばれる現象が生じる。誘導ラマン散乱は、各波長の光信号パワーや、波長多重信号の光スペクトル形状などにより複雑に変わるため、最適な伝送条件を実験的に調べることは難しいという課題があった。
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