データセンターの放熱/冷却システムの詳細を解説する。まずは空冷方式を取り上げる。
サーバやデータセンターなどの放熱技術に注目が集まっている。演算処理を担うGPUとCPUの最大消費電力(熱設計電力(TDP))が増加しつつあることで、効率の高い放熱技術が強く求められるようになってきた。
そこで本コラムでは、サーバやデータセンターなどを支える最新の放熱技術を第468回から、シリーズ「AIサーバの放熱技術」の名称で説明している。前回は、サーバの主なフォームファクター(外形の形状と寸法)を簡単に解説した。タワー型、ブレード型、ラック型である。この中で大型データセンターや広いサーバルームなどに置かれるのは、サーバラックにマウントしたラック型サーバとブレード型サーバなどだ。
このようなシステムでは従来、ラックマウントしたサーバ(以降はサーバと略記)が発生する熱を空気の対流によって逃がしていた。通風を兼ねた空間を床下に持たせたフロア(二重床工法によるダクトフロア)に冷たい空気を流し、床下の通風口からサーバに空気を送り込む。サーバによって温められた空気は上昇し、天井を水平に流れる。温められた空気は、空調機(CRAC:Computer Room Air Conditioner、「クラック」とも呼ぶ)によって冷やされ、床下に送り込まれる。
空調機(CRAC)を利用する空気冷却方式の許容電力はそれほど大きくない。ラック当たりで最大10kWとされる。2020年の時点で高性能コンピューティング向けデータセンターの消費電力はラック当たりで20kW〜40kWに達しており、CPUの消費電力は200Wを超え、GPUの消費電力は300Wを超えていた(参考文献:「現代のデータセンターの冷却戦略」、Hewlett Packard Enterprise、2020年9月発行)。
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