不透明な国際情勢や大規模な自然災害など、サプライチェーンがさまざまなリスクにさらされる中、AI(人工知能)を活用して、影響を詳細かつ正確に予測しようとする動きが出ている。
これまでサプライチェーン業界を統制してきたシステムは、機能的ではあるが、今日の複雑で動きの速い世界情勢の中では限界に達しつつある。AI(人工知能)は長い間、“技術エリートのために用意されたぜいたく品”と見なされてきたが、現在では、サプライチェーン管理において競争力を維持したいと考えるあらゆる企業にとって不可欠なものとなっている。
既存のサプライチェーンはこれまで、出荷の遅延や在庫切れ、コスト超過などの問題が顕在化してから初めて対応するという、リアクティブ(受け身)なモデルに依存してきた。分刻みのデータを利用できるようになった世界では、このような手法は非効率的なだけでなく、維持していくことも困難だ。
AIの活用により、企業は、リアクティブなサプライチェーン管理からプロアクティブ(先手を打つ)なサプライチェーン管理へと移行しようとしている。しかし、統合データレイクや包括的なデータ管理プラットフォームのような強力なAIインフラを最初に構築しなければ、企業はAIを十分に活用できず、データの洞察/解析が断片化されたり、最適化のチャンスを逃したりすることになりかねない。企業は、最初にしっかりとした土台を築くことで、AI投資によって正確かつ実用的な洞察を確実に提供し、世界的な混乱に直面する中でも効率性とレジリエンスを高められるようになる。
適切なAI基盤の構築には膨大な時間やコスト、複雑性が伴い、長年にわたる開発期間や数千万米ドル規模の投資が必要になるため、多くの企業が悪戦苦闘している。そのために、こうした取り組みを断念したり、意味のある洞察を提供できない不十分なシステムで妥協したりする企業も多い。企業にとっては、正しいデータ統合プロセスやインフラなしにはAIのメリットを十分に活用することができず、サプライチェーン管理を最適化する機会を失ってしまう。
AIのメリットに関する重要な要素には、大量のデータを迅速に処理し、サプライヤーの実績から在庫レベルに至るまで、全てをリアルタイム分析できるという機能がある。よくある質問に、「なぜAIに関心を持たなければならないのか。業務に対して直接どのようなメリットがあるのか」というものがある。その答えは、複雑かつ多変数のデータの意味を理解し、時間短縮とコスト削減が可能な実用的なインテリジェンスに変えることができるというAIの能力にある。もはや、需要予測や在庫最適化のために何時間もかけて計算する必要はないのだ。
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