2024年4月1日にニデックの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した岸田光哉氏は、「新体制となり悩みながら議論を続け、この半年歩んできた。5つの事業領域と3つの技術領域に注力するという戦略について、まだまだできることがたくさんあるという実感がある」と強調した。
過去1年で、とりわけ大きく方針転換を図ったのが車載事業だ。このうちトラクション事業については、広州汽車グループとの合弁会社(GNAD)およびNPeに注力して早期に黒字化を図る他、ニデックがもともと強みを持つ部品単体ビジネスも強化してきた。その結果、GNADでは第2四半期から黒字を計上。岸田氏は「今後、二度と赤字になることはないという覚悟を持って事業を展開していく」と述べた。NPeについては、事業改善が予定通りに進み、赤字幅が減少しているとした。2024年度下期での黒字化を目指す。「ステランティスは、欧州自動車メーカーにおいてはEV戦略の“勝ち組”とされている。欧州のEV市場には荒波が来ているが、当社は現状でもしっかり黒字が出る体制を整えている」(岸田氏)
車載事業では、競争力を強化すべく組織を見直し、ニデックグループ内での統合や協業を実施する。一例として、自動車の電子化/電子制御に対応するため、ボディ制御系ECU(電子制御ユニット)を手掛けるニデックモビリティと、車載用インバータ/ECUを手掛けるニデックエレシスを統合すべく、現在協議に入っているという。加えて、欧米でのオペレーションに強みを持つ家電産業事業本部(ACIM)に車載の既存事業を統合し、ローカルでの即時対応力を強める。「車載分野の顧客からは通気一貫でソリューションを提供してほしいというニーズが強い。これに応えるべく、グループを挙げて対応するための体制を整えていく」(岸田氏)
さらに、AIの普及によりGPU/データセンターの消費電力増大が大きな課題になっていることから、水冷モジュールの展開を加速するとした。製品カテゴリーとして「QC(Quick Coupling)」「LCM(Liquid Cooling Module)」「CDU(Coolant Distribution Unit)」をそろえ、いずれも量産体制の整備や次世代品の開発を強化している。岸田氏は「大きな市場成長が期待される最も楽しみな分野。グループを挙げて、この市場への参入を加速する」と語った。
岸田氏は、「確かな船出をしたと確信している。どのような荒波が来ても、われわれは前進を続けていく」と述べ、記者説明会を締めくくった。
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