NTTは、300GHz帯の半導体回路を用いた小型無線フロントエンド(FE)を開発し、160Gビット/秒のデータ伝送に成功した。6G(第6世代移動通信)で超高速通信を実現するための重要なデバイスとなる。
NTTは2024年10月、300GHz帯の半導体回路を用いた小型無線フロントエンド(FE)を開発し、160Gビット/秒のデータ伝送に成功したと発表した。6G(第6世代移動通信)で超高速通信を実現するための重要なデバイスとなる。
無線FEには、送信用の「Transmitter(TX)」と受信用の「Receiver(RX)」がある。TXは、周波数変換を行う「ミキサー」や「RF用電力増幅器(RF PA)」、「LO(局部発振)用電力増幅器(LO PA)」などで構成される。RXは「ミキサー」や「低雑音増幅器(LNA)」および、「LO PA」といった回路ブロックからなる。超高速無線を実現するには、これらのデバイスを300GHz帯で動作させる必要があるという。
NTTはこれまで、高速トランジスタ「InP-HEMT」と独自の高周波アナログ回路設計技術を用い、300GHz帯FEの研究開発を行ってきた。そして2020年には作製したFEで、120Gビット/秒のデータ伝送を実現した。ただ、「複数モジュールを組み合わせるためサイズが大きい」、「複数のモジュールを接続することで、FEの動作帯域が制限されデータレートを向上させるのが難しい」といった課題があった。
NTTはこれらの課題を解決するため、FEを構成する回路の集積化に取り組んだ。ところが、集積化を進めるには、ミキサーで発生するLOリークを除去する必要がある。伝送する信号の品質劣化を防ぐためだ。そこで今回、差動構成のFEを検討した。TXには「ミキサー」や「LO PA」「LO PA」が集積されており、これらの回路は全て差動構成となっている。
差動構成のFEでは、ミキサー後段においてLOリークを逆位相で干渉させLOリークを除去する。このため、差動信号発生回路であるバランと、同相除去機能を備えた差動増幅器を用いて完全差動LO信号を生成し、この信号でミキサーを駆動させる必要がある。
NTTは今回、独自の同相除去回路をLO PAの各増幅段に適用することで、LO PAによる完全差動LO信号の生成に成功した。さらに、LO位相反転回路(LOPI)を組み合わせ、ミキサー後段でLOリークを除去する構成とした。この結果、従来のシングルエンド構成に比べ、LOリークは250分の1以下となり、ワンチップ化を可能にした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.