米国では、2025年1月のトランプ政権への移行を前に、バイデン政権がCHIPS法支援金の分配を急ぐ可能性がある。
米バイデン大統領は、次期トランプ大統領が2025年1月20日に就任する前に、米CHIPS法(CHIPS and Science Act)で計上されている530億米ドルの資金をより多く半導体メーカーに分配しようと急いでいる。アナリストたちが米国EE Timesに語ったところによると、トランプ政権は、米国半導体業界に新たな投資の波を引き寄せる可能性があるという。
米国ワシントンD.C.に拠点を置く経営コンサルタント会社Albright Stonebridge Groupで、グローバルなテック企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏は、「大きな問題は、次に何が来るのかという点である。業界の時間軸を考慮すると、すぐにでもCHIPS法の改定版”CHIPS法2.0”の準備を進めることが望まれているからだ。第2のCHIPS法に対する支持が十分に得られる可能性は、現在のところ極めて低いとみられる」と述べている。
また同氏は、「トランプ政権は全体的な半導体政策について、産業政策と関税/輸出規制の両面で新たな視点から見直すことになるだろう」と付け加えた。
「トランプ新政権は、バイデン政権が大統領選挙後に押し出そうとしている大規模な新しい輸出規制パッケージを、ほぼ確実に支持するとみられる。また、さらなる輸出規制やエンティティリストの他、中国半導体業界をターゲットとするさまざまな措置の拡大を推進していくだろう。トランプ政権は、中国とテクノロジーに関して確固たる見解を持つ政府当局者たちを登用する可能性がある。その中には、中国企業を標的とする強硬な輸出規制措置を最初に加速させた第1次トランプ政権からの人材も含まれるだろう」(Triolo氏)
技術調査会社であるTechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏によると、次期トランプ大統領の関税政策は、世界の半導体業界に劇的な影響を及ぼす見込みだという。
Hutcheson氏は、「トランプ大統領は、関税を実施するための法律を必要としない。米国の製造業を支援する方法の一つに、海外ファウンドリーで製造された半導体チップをベースとして関税を課すというものがある」と付け加えた。
「例えば、1000米ドルのスマートフォンに10%の関税がかかるとする。もしそのシリコン面積全体のうち、米国内のウエハー工場で作られたものの割合が10%だけだった場合、100米ドルの関税は10米ドルしか下がらない。輸入されるスマートフォンのシリコン面積全体のうち、米国ウエハー工場で作られた製品の割合が90%まで上がると、関税は90米ドル下がる。これにより、米国のウエハー工場は即座に、海外ファウンドリーよりもコスト効率を高められるようになる。また、地域別にターゲットを定めることで、報復を回避することもできる」(Hutcheson氏)
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