日本ガイシは「CEATEC 2024」で、カーボンニュートラルやデジタル社会の実現に向けた同社の技術を紹介した。さらに、薄くて小型のリチウムイオン二次電池「EnerCera」や、高周波デバイス用の複合ウエハーなどを展示した。
日本ガイシは「CEATEC 2024」(2024年10月15〜18日、幕張メッセ)で、非常に薄く小型のリチウムイオン二次電池「EnerCera(エナセラ)」や、高性能デバイス用の複合ウエハー、低BPD(基底面転位)密度のSiCウエハーなどを展示した。
現在、日本ガイシは、がいし/電力関連装置事業、高いシェアを持つ自動車排ガス浄化用セラミックスなどの環境関連事業に続く「第3の創業」を目指している。同社の執行役員 NV(New Value)推進本部 DS(Digital Society)事業開発担当の大和田巌氏は「第3の創業のキーワードになるのが、カーボンニュートラルとデジタル社会だ」と述べる。
カーボンニュートラルについては、大気中のCO2を吸着するDAC(Direct Air Capture)技術や、分子レベルでCO2やメタンなどのガスを分離できる技術などを開発中だ。
デジタル社会への取り組みとしては、IoT(モノのインターネット)デバイス、自動車・電気/電子機器、データセンター、半導体/AI(人工知能)、無線/光通信の5つの分野に焦点を当て、ウエハーや基板/パッケージ、電池などを提供する。「IoTデバイスで取得したデータをクラウドに上げ、半導体の処理によってAI学習や推論を行う。その結果を光通信や無線通信によって自動車、電気/電子機器に戻して、実際の制御や処理につなげる。このようにデータをぐるぐる回していくことでウェルビーイングを実現することが、われわれがデジタル社会への取り組みを行う目的だ」(大和田氏)
大和田氏は「われわれが強みを持つセラミックスの部材によって、デジタル社会を実現する機器の設計に貢献したい」と続ける。一例として、小型のIoTデバイスへの搭載に適したEnerCeraや、データセンター内/データセンター間通信に使う光変調器用の複合ウエハー、光通信用セラミックパッケージ、HPC(高性能コンピューティング)用パッケージ部材、5G/6G(第5/第6世代移動通信)用複合ウエハー、パワーデバイス用SiCウエハーなどを挙げた。
光変調器用の複合ウエハーは、次世代高速光通信向けの光変調器用に有望だという。「数百ギガビット/秒クラスの光通信では、現在主流のシリコンフォトニクスによる光変調器ではなく、TFLM(薄膜ニオブ酸リチウム)を用いたデバイスが有望になるとみられている。当社はもともと、薄型のニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの複合ウエハーをスマートフォンの無線通信用フィルター向けに提供してきた。これを、光変調器向けに提供することを考えている」(大和田氏)
半導体関連では、セラミックスの高い剛性などを生かしたパッケージや回路基板に期待を示す。AI用半導体は、処理性能のさらなる向上に向け高集積化と大型化が進む他、チップレット集積も増加している。「チップレット集積に用いるパッケージや回路基板では、熱プロセスに耐性のある強度と、(積層するので)平たん性が重要になる。セラミックスはどちらも実現できる素材だ。コストパフォーマンスを意識しながら、高い放熱性を備えたソリューションを提供していく」(大和田氏)
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