Intelの歴史上類を見ない技術者/エンジニアのCEOとして、大きな期待を受けその職に迎えられたPat Gelsinger氏が、約4年間にわたり指揮を執ってきた同社を去った。Intelは直ちに新CEOを探し始めるとしているが、Gelsinger氏以上に適した人物は存在するのだろうか。
Intelは、苦難の時を迎えている。CEO(最高経営責任者)Pat Gelsinger氏が、約4年間にわたり指揮を執ってきた同社を去った。Gelsinger氏の退任は、2024年12月2日(米国時間)に短いプレスリリースの中で発表され、業界に衝撃を与えた。同氏は2024年12月1日付で退任し、今後Intelの役員を務めることはないという。
Intelの回想的なプレスリリースとその表現から、Gelsinger氏と取締役会との間に大きな意見の相違があったことが分かる。このリリースは、そこで触れられていないことの方が興味深い。Gelsinger氏の退任理由が全く記されていないのだ。もし健康上の理由や個人的な理由であれば、そのように記されるはずだ。Intelの業績とは無関係な理由であれば、暫定CEOは、Gelsinger氏の戦略を信じ、それを引き続き実行していくという意向を語ったのではないだろうか。しかし、Gelsinger氏の計画を信じるということや、継続性/安定性について述べられることもなく、次に何が起こるのかということについての手掛かりもほとんどなかったのだ。
そこに記されていたのは、Gelsinger氏が自身の時期尚早な退任について『ほろ苦い』感情を持っているということと、Intelが直ちに新CEOを探し始めるということだ。
これはつまり、取締役会か投資家たちのどちらかが、Gelsinger氏の「IDM 2.0」ビジョンに我慢できなくなったということだ。表面的には、Intelの株価は同氏が2021年に就任して以来60%下落していて、2024年だけでも約50%下落した。そして2024年7〜9月期には、133億米ドルの売上高に対して純損失が166億米ドルという壊滅的な業績に終わったところだ。しかし、このような数字だけでは詳しい事情は分からない。収益は予想を上回っていて、損失は計画的に実施された再編改革によって生じたものだった。全体的に見て、Gelsinger氏がビジネスの両側面で実行した複数年に及ぶ改革は、全て展開し終えるのに数年かかるだろう。
Intel取締役会の暫定執行委員長を務めるFrank Yeary氏は、報道向け資料の中で、「取締役会として、われわれは何よりもまず、製品グループを全ての取り組みの中心に置く必要があることを理解している」と述べる。
業界観測筋の大半は、Intel FoundryとIntelの製品事業部門との分断について取りだたされているが、それが何を意味するのかと考えている。取締役会は、新たにIntel ProductsのCEOという役職を設置した。これは、製品部門には個別のリーダーシップが必要で、ファウンドリー部門とはさらに距離を置く必要があるという考えを示しているといえる。評論家の中には、分断の可能性を引き続き検討していくという取締役会の意向が、Gelsinger氏を退任に追いやったのではないかとする見方もある。それは、同氏のビジョンとは正反対のものではないだろうか。
Intelが製品面でいくつかの過ちを犯したのは事実だが、現在市場投入されている半導体チップの大半は、Gelsinger氏の就任前から始まっていたプロジェクトをベースとした製品だ。Intelの低迷は、同社のAI(人工知能)/GPU戦略が失敗に終わったことが大きな要因となっているのは間違いない。競合メーカーであるNVIDIAやAMDが大きな成長を遂げているのに対し、Intelは危機的状況に陥っている。しかしこれもまた、Gelsinger氏より以前のCEOたちの戦略によるものであり、それが今もまだ続いている。同氏は現在まで、誰かの尻拭いをしてきたにすぎないのだ。
またYeary氏は、「よりスリムかつシンプルで、さらに機敏なIntelの実現を目指す」と発言しており、これは理事会が容赦ない人員削減について検討しているに違いないことを示唆している。
そこで、Intelの新CEO探しに注目が集まる。取締役会は暫定共同CEOとして、David Zinsner氏とMichelle Johnston Holthaus氏を指名した。Zinsner氏は前CFO(最高財務責任者)であり、Holthaus氏はこれまでクライアントコンピューティンググループ(CCG)のゼネラルマネージャーを務め、現在はIntel Products CEOを兼任している。しかし、誰がGelsinger氏の正式な後任となるのだろうか。
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