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米国の厳しい対中規制 目的見失えば逆効果に報復措置でIntelが標的に?(1/3 ページ)

米国は2024年12月に、新たな対中輸出規制を発表した。この一撃は両国間の技術戦争においてこれまでで最も強力なものだが、アナリストによれば、その効果には疑問があり、米国のイニシアチブは不十分かもしれないという。

» 2025年01月09日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

バイデン政権が新たな対中輸出規制を発表

 2024年12月2日(米国時間)、米国は半導体製造装置を中心とした新たな対中輸出規制を発表した。その数日後、中国は、同国が管理する主要な半導体材料の輸出を禁止するなどの報復措置を取るとともに、国内企業に対して米国製チップは「安全ではない」として使用しないよう呼びかけた。South China Morning Post紙は2024年12月9日、中国の市場監視当局が、NVIDIAに対する独占禁止法の調査を開始したと報じた。今のところ、双方とも事態が落ち着くのを待っている状態だ。

 米商務省産業安全保障局(BIS)は12月2日に発表した声明の中で、「今回の規制は、中華人民共和国の先端ノード半導体の生産能力をさらに弱体化させることを目的としている。先端ノード半導体は、重要な軍事的用途向けの次世代先進兵器システムやAI(人工知能)、先進コンピューティングに使用される可能性があるためだ」と述べている。

 バイデン政権下での3回目の措置となる今回の輸出規制は、これまでで最も厳しいものになるとみられる。Paul Triolo氏は米国EE Timesに対し、「米国当局は対中規制の根拠について何度もゴールポストを動かしてきた」と語った。Triolo氏は、ワシントンD.C.に拠点を置くAlbright Stonebridge Groupで世界中のテクノロジー企業にアドバイスを提供している。

 電子工学エンジニアで米国政府のために中国で働いた経歴を持つTriolo氏は、「中国企業による高度なAIモデルの開発を遅らせることが目的だとすれば、明確な結論はまだ出ていない。中国の民間企業は先進的なGPUを備蓄しており、AIモデルの開発を継続的に進めることができる。実際に、2022年11月に公開されたOpenAIのChatGPTとの差を大幅に縮めている」と述べている。

 Triolo氏は、「中国の商用的な取り組みは、軍事用途ではなく民間用途に焦点を当てている」と指摘した。

米国の規制、効果に疑問も

 SemiAnalysisのアナリストを務めるJeff Koch氏はEE Timesに対し、「米国の規制は、より厳しい制限と免除が奇妙に混ざり合っており、全体的な効果を弱めている」と語った。

 同氏は、「デミニマス閾値を撤廃することは、米国製の集積回路を含む装置や米国製の装置で製造されたICでさえも外国直接製品規則で管理することを意味し、規制の広範な拡大になる。HBM(広帯域幅メモリ)の販売に関しても同様で、現行の全てのタイプのHBMは事実上ブロックされることになる」と述べている。

 「それと同時に、米国外で最も重要な最先端ツール製造国である日本とオランダは、厳格化された外国直接製品規則の対象外となっている。同様に、中国のDRAMのチャンピオンであるCXMTは、特定のHBM専用装置を入手できるよう適用を免除されている。結局のところ、この規則には数多くの妥協点があるため、かなり弱体化されているのだ」(Koch氏)

 米国政府の中には、中国政府の軍事民生融合イニシアチブや、中国が最先端の半導体技術を兵器や衛星ネットワークなどのシステム支援に使用する可能性について、引き続き懸念する声もある。広く予想されていたこの最新の規制措置に続き、次期トランプ政権下ではさらに強力な措置が実施される可能性がある。

 2024年12月の新規制には、24種類の半導体製造装置と3種類のEDAツールに関する規制も含まれている。HBMの輸出も新たな規制対象となる。BISは、「米国は、エンティティリストに140社の企業を追加掲載した他、中国政府の軍事力近代化の推進に関与している中国のツールメーカーや半導体ファブ、投資企業に対しても新たな措置を課した」と述べた。

 Triolo氏は、「米国政府が主に懸念しているのは、特にHuaweiが、中国政府からの新たな支援を受けたリソースを確保しているのではないかという点や、中国半導体業界が、現在唯一オランダのASMLしか提供できない最先端リソグラフィのような独自の最先端機能を開発する上で必要なエンジニアリング/管理技術を保有しているのではないか、といった点だ。米国政府当局は、中国の取り組みを弱体化させようと躍起になっている」と述べる。

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