ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は、2026年3月をめどに液晶パネルの主力工場である茂原工場(千葉県茂原市)での生産を終了する。同工場は、売却を主眼とするAIデータセンターとしての活用を見込む。今後、JDIの国内生産は石川工場(石川県能美郡)に集約する方針だ。
ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は2025年2月12日、2026年3月をめどに液晶パネルの主力工場である茂原工場(千葉県茂原市)での生産を終了すると発表した。同工場は、売却を主眼とするAIデータセンターとしての活用を見込む。今後、JDIの国内生産は石川工場(石川県能美郡)に集約する方針だ。また、同社が注力する次世代有機EL(OLED)ディスプレイ「eLEAP」については「ファブレス事業展開とグローバルエコシステムの構築に向けて、eLEAPパネルの委託生産先となるファウンドリーパートナーと協議している」と説明している。
JDIは生産終了の決定について「厳しい過当競争が続くディスプレイ産業への依存による慢性的な赤字体質から脱却するためには、これまで以上に大きな戦略的転換が必要となっている。当社はさらなる改革によりディスプレイ事業の早急な黒字化を図ると同時に、社会が求める高成長分野であるセンサー&ソリューションおよび先端半導体パッケージングへの参入を図り、ディスプレイ専業メーカーから『BEYOND DISPLAY』への進化を遂げるための新たな戦略を推進している」などと説明。この戦略実現のため、経営資源の最適化に向けた議論と検討を重ねてきた結果、「ディスプレイ事業についてアセットライト化と生産効率の大幅な向上が早期の収益改善に向けて不可欠だと判断した」としている。
石川工場(基板サイズG4.5)は、茂原工場(同G6)と比較し固定費が約4分の1と小さいことに加え、G4.5は今後JDIが注力する、先端半導体パッケージングやセンサーの生産に有利といった利点があるといい、今回、茂原工場で2026年3月をめどにパネル生産を終了し、石川工場に生産機能を集約することを決定した。茂原工場で生産中の車載用を中心とするパネルは、顧客と協議のうえ作り溜めや石川工場への生産移管を行うほか、JDIが設計したパネルをファウンドリーパートナーから調達することも含め、供給責任を果たすとしている。
同工場で生産しているOLEDディスプレイは、生産終了に伴い自社生産を中断する。なお、茂原工場ではもともとeLEAPを2024年12月に量産する予定だったが、JDIは同月4日、「InnoluxおよびCarUXとのeLEAP戦略提携」および「世界初HMO技術を採用した32型車載用eLEAPディスプレイ開発」といった複数の戦略的なeLEAPプロジェクトが同時進行している影響で開発リソースが逼迫(ひっぱく)していることを理由に、eLEAP初製品の量産開始を2025年3月に延期すると公表していた。JDIは今回、「eLEAPのファブレス事業展開とグローバルエコシステムの構築に向けてeLEAPパネルの委託生産先となるファウンドリーパートナーと協議を進めている」と発表した。
今後、石川工場には茂原工場のG6液晶セル工程の設備を移設し、ファウンドリーパートナーからG6基板の調達を行う予定。JDIは「石川工場は、G4.5+G6高付加価値ディスプレイ、センサー、先端半導体パッケージングの同時生産を行う『MULTI-FAB工場』として、柔軟性、生産性およびコスト競争力が極めて高く、幅広い顧客に対応可能な生産体制を構築する」などと強調している。
茂原工場の従業員については「協業先と実行計画についての協議および業界再編に向けた取り組みを進めている最中であり、決定次第知らせる」と説明。工場資産は現在、AIデータセンターのニーズのある多数の企業と資産売却を主眼に交渉を進めているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.