TSMCの工場誘致が順調に進んでいる。今後、日本はどのような半導体メーカーの誘致を積極展開すべきなのか。誘致する側、誘致される側、双方の立場を考えて私見を述べてみたい。
2024年末、TSMC熊本第1工場での量産がスタートした。製造プロセスとしては12nmまで対応できるとしており、月産能力は300mmウエハー換算で最大5万5000枚だという。第2工場の計画も順調に進んでいる。第2工場は6nmプロセスまで対応し、月産能力は同10万枚。2027年の稼働開始を目指している。そして昨今では「第3工場をどこに建設するか」という話まで持ち上がっている。TSMCの国内誘致はどんどん話が具体化しているが、他の企業に対してはどうだろうか。2024年はPSMCの宮城県への誘致案件が白紙撤回された。他にどんな案件が候補に挙がっているのか。そもそもどのような半導体メーカーの誘致を積極展開すべきなのか。誘致する側、される側、双方の立場を考えて私見を述べてみたい。
まず、日本政府が掲げている「日本における半導体産業戦略」についておさらいしておこう。政府は2023年6月に「半導体・デジタル産業戦略」の改定を取りまとめ、274ページにわたる膨大な資料を公表した。この件については本連載でも過去に紹介しているがその後、特に方針変更されていないので、政府の目標も据え置きだろう。その前提でもう一度、下図を眺めてみた(関連記事:弱きを助けるよりも強きに頼れ! ―― 実現性の高い日本の半導体・デジタル産業戦略とは)
改めて、高い目標だと痛感するが、これを実現するためには何をすべきだろうか。グラフを見ても分かる通り、日本国内の半導体生産が5兆円にとどまっていると、世界シェアは15%から10%以下へと落ちていくことになる。2030年の15兆円が実現できるかどうかはともかく、生産金額を飛躍的に引き上げるためには、成長率の高い半導体デバイスの工場を建てなければならない。
上図は、世界半導体市場の製品別出荷の推移である。これを見ても分かる通り、ロジックとメモリの成長率が他の製品を圧倒している。つまり、日本国内の生産金額を伸ばすためには、ロジックとメモリの工場を建てる必要がある。
この2つの製品市場が伸びるのは、大量なデータ処理に不可欠であること、そしてプロセスの微細化によってロジックはより高速に、メモリはより大容量にデータを扱えるようになるからである。もちろん、アナログもディスクリートも必要な半導体製品だが、昨今のAIブームで大量なデータを高速に処理するニーズはますます高まっている。その結果、ロジックとメモリの比率がさらに高まる可能性がある、ということになる。
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