NXP Semiconductors(以下、NXP)は、米国カリフォルニア州シリコンバレーのエッジAIチップスタートアップであるKinaraを3億700万米ドル(約465億円)の現金で買収した。Kinaraが得意とするマルチモーダルトランスフォーマーネットワークを生かし、エッジデバイスとの「人間のようなやりとり」を目指す。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は、米国カリフォルニア州シリコンバレーのエッジAIチップスタートアップであるKinaraを3億700万米ドル(約465億円)の現金で買収した。規制当局の承認を受け、2025年上半期に買収完了する予定だ。
Kinaraは2021年にシリーズBで5400万米ドル(約82億円)の資金調達を完了している。今回の買収は、2023年ごろから立て続けに発表されたエッジAIチップ企業のエグジット(出口戦略)に続くものだ。これまでにSnapがGrAI Matter Labsを、AmazonがPerceiveを、Analog DevicesがFlex Logixを買収し、Blaizeが特別買収目的会社経由で上場した。
NXPの戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるRutger Vrijen氏は米国EE Timesに対して「Kinaraの技術と市場はNXPのAI戦略と完全に一致している」と語った。
「エッジでAIを実行できる能力は、クラウドに依存するよりも大きなメリットがあると考えている。これはエネルギー効率とコストが理由だと思われがちだが、遅延の削減によって、デバイスがリアルタイムに意思決定を行えるというメリットもある」(Vriijen氏)
NXPが目指すのは、エッジデバイスとリアルタイムで人間のようなやりとりをすることだ。それには、Kinaraが専門とするマルチモーダルトランスフォーマーネットワークが必要となる。
Vriijen氏は「KinaraをNXPに迎え、KinaraのディスクリートNPU(Neural Processing Unit)とNXPのプロセッサポートフォリオを組み合わせることで、エッジで何が実現可能かを再定義できる」と語った。
Kinaraは以前からNXPとパートナーシップを結んでいて、KinaraのAIアクセラレーターでNXPのアプリケーションプロセッサのAIワークロードをオフロードするデモを行ってきた。「CES 2025」(2025年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)では、大規模言語モデル(LLM)「LLaVa-7B」と「Llama」のデモを披露した。LLaVa-7Bで画像分類を行い、Llamaでは自然言語で画像を説明した。利用例としては、外出中に家の中で起きたことを家主に説明するホームセキュリティカメラシステムなどがあるという。Vrijen氏は「これを見た顧客の熱意を感じることができた」と述べている。
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