大阪大学は豊田中央研究所と共同で、絶縁膜と炭化ケイ素(SiC)の界面に局在する「発光中心のエネルギー準位」を解明することに成功した。界面発光中心を単一光子源として利用した量子技術を実現できるとみている。
大阪大学は2025年2月、豊田中央研究所と共同で、絶縁膜と炭化ケイ素(SiC)の界面に局在する「発光中心のエネルギー準位」を解明することに成功したと発表した。界面発光中心を単一光子源として利用した量子技術を実現できるとみている。
SiCは材料物性に優れており、量子技術への応用が期待されている。中でも注目されているのが、量子技術において単一量子源として機能する絶縁膜/SiC界面発光中心である。ダイヤモンド中のNV(Nitrogen-Vacancy)センターより強い発光を示すことが知られているものの、その起源や発光メカニズムは、これまで理解されていなかったという。
そこで研究グループは、界面発光中心の起源などを明らかにするため、エネルギー準位の解明に取り組んだ。実験では、酸化温度や酸素分圧など、酸化条件を変えて複数の絶縁膜/SiC構造を作製し、界面の光学特性や電気的特性についてそれぞれ調べた。この結果、界面発光中心の発光強度と電子トラップ密度の間で、明らかに相関があることを発見、両者が共通の起源に由来することを突き止めた。
また、電子トラップは特定のエネルギー範囲に分布しており、界面発光中心が特定のエネルギー準位(SiCの伝導帯下端から0.65〜0.92eV)を持つことが分かった。これを論理研究の結果と比べたところ、界面近傍SiC中の置換型炭素ダイマー((C2)Si)が、界面発光中心の起源として有力な候補であることが分かった。
今回の研究成果は、大阪大学大学院工学研究科の小林拓真准教授や大西健太郎氏(博士前期課程)、中沼貴澄氏(博士後期課程)、渡部平司教授および、豊田中央研究所の遠山晴子博士、田原康佐博士、朽木克博博士らによるものである。
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