富士通は、次世代データセンター向けの省電力プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発に取り組んでいる。その特徴やターゲットアプリケーションについて、富士通 富士通研究所 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクターの吉田利雄氏に聞いた。
富士通は、次世代データセンター向けの省電力プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発に取り組んでいる。2nmプロセスを採用したArmベースのCPUとして新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」における「次世代グリーンデータセンター技術開発」の枠組みで開発中で、2027年の出荷を目指している。
FUJITSU-MONAKAの特徴やターゲットアプリケーションについて、富士通 富士通研究所 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクターの吉田利雄氏に聞いた。
富士通はこれまで「京」「富岳」といったスーパーコンピュータを開発してきた。富岳はスーパーコンピュータの性能指標であるGraph500でビッグデータ処理において10期連続で1位、HPCGでも実アプリ性能において10期連続で1位を獲得している。富岳のプロセッサとして開発された「A64FX」は電力効率も高く、「同時期に開発されたIntelのCPUと比べて、消費電力当たりの処理速度は約2.9倍だった」(吉田氏)という。
こうして培った技術を生かして始まったのが、次世代プロセッサであるFUJITSU-MONAKAの開発だ。大規模データセンターの需要が拡大する中で、データセンターの消費電力のうち約60%を占めるのはプロセッサであることから、プロセッサの省電力化によってカーボンニュートラルへの貢献を目指す考えだという。FUJITSU-MONAKAの名称は和菓子の最中に由来し、日本製であることと親しみやすさをアピールする狙いがある。
FUJITSU-MONAKAは、富士通独自の3次元(3D)メニーコアアーキテクチャで高性能化と省電力化を実現。出荷を目指す2027年時点で、競合のCPUと比べてアプリケーション性能/電力効率ともに約2倍になる想定だという。
コアダイには2nmプロセスを使用している。2nmプロセスを使用すれば性能は上がるがコストが大きくなりすぎるため、それ以外の部分には「最先端プロセスを採用する効果があまりない」(吉田氏)として5nmプロセスを使用し、コストを抑えている。
電力効率については、独自技術で2nmプロセスの標準よりも大幅に低い電圧での動作を可能にし、1世代先行した省電力化を実現している。低電圧動作技術は富岳にも適用したものをさらに強化させたという。低電圧動作になるとSRAMのデータが不安定になるという問題があるが、独自の回路技術で低電圧での安定動作をかなえた。
空冷を想定しているのも特徴だ。データセンター向けのハイエンドCPUは消費電力が大きいため水冷を想定したものが多いが、初期投資が大きい上にCPUと水冷設備ではライフサイクルが異なることからハードルが高く、ハイパースケーラー以外が対応することは難しい。よって、FUJITSU-MONAKAはより幅広い層に使ってほしいとの考えから空冷を想定しているという。
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