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元ザイリンクスのアルテラジャパン社長 「次は古巣を抜く」Sam Rogan氏(1/2 ページ)

2024年1月、AlteraはIntelの独立子会社となった。日本法人アルテラの社長に就任したSam Rogan氏は「Intelから独立したことで、特に組み込み向けの製品開発に、より集中できるようになる」と述べる。同氏に日本での今後の戦略を聞いた。

» 2025年04月01日 13時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 2024年1月に、Intelの独立子会社として再出発を果たしたAltera。その日本法人であるアルテラの社長に就任したのがSam Rogan氏だ。同氏は2007〜2022年までXilinx(AMDが買収)の日本法人ザイリンクスの代表取締役社長を長く務めていた人物でもある。2022年3月にはSiFiveの日本法人社長に就任したが、2024年6月、アルテラの社長に就任したことでFPGA業界へと戻った。これからアルテラをどう率いていくのか。Rogan氏に聞いた。

「altera」の社員証を掲げるAltera Japan社長兼アジアパシフィックAltera代表、Sam Rogan氏 「altera」の社員証を掲げるAltera Japan社長兼アジアパシフィックAltera代表、Sam Rogan氏

ザイリンクスからアルテラに

――数年ぶりにFPGA業界に戻ってきましたね。

Sam Rogan氏 IntelがAlteraの分社化を発表したのは2023年10月で、それ以来、現在のAltera CEOのSandra Rivera氏(当時はIntelのエグゼクティブバイスプレジデント兼データセンター/AIグループのゼネラルマネージャー)から何度も直接、日本法人社長に就任してほしいと打診を受けていた。

――SiFiveから移ってきました。

Rogan氏 SiFiveは非常に期待できる会社だ。半導体IPコア分野ではArmが長く独壇場で、さらにArm自らチップを開発するとも報じられている。Armの顧客と、競合関係になる可能性もあるわけだ。そうなればArmの顧客各社は別のコアを探す必要性が出てくるだろう。RISC-Vコアはサイズが小さく、性能も高い。ネックはエコシステムの規模だ。とはいえ、既に何千億個のコアがグローバルで実装されている。

――Intelは2015年にAlteraを買収し、約10年で切り離すことになりました。

Rogan氏 IntelがAlteraを買収したのはデータセンター事業を強化したかったからで、その意味ではIntelによるAltera買収は成功だった。ただし、FPGAビジネスは、もともと少量多品種のニーズに応えていく側面もあり、そういった顧客をどうするのかが課題になっていた。

 一方で、少量多品種の定義が以前とは変わってきている。以前の「少量」は本当に「少量」だった。だが現在はマスクの開発費が高騰し、昔でいう「少量」を生産していたのでは採算が全く取れなくなっている。ある程度の数量が求められるようになっている現在は、FPGAの利点をさらに生かせるのではないか。

組み込み向け製品にも開発リソースを集中

――AlteraがIntelから独立したことで期待できることは何でしょうか。

Rogan氏 ターゲット市場に向けて、よりリソースを集中できると考えている。x86の世界では、ハイエンドから開発し、ミッドレンジやローエンドへスケールダウンさせていくのがセオリーだ。松、竹、梅の順に開発していくので、竹や梅の開発費は基本的には抑えられる。だがFPGAの場合、“松竹梅”は性能での切り分けではなく、機能での切り分けになる。そのため、松竹梅それぞれで投資が必要になってくる。われわれにとって喜ばしいのは、2023年1月に発表した「Agilex 9」によって、ようやく最先端プロセスのハイエンドFPGAを展開できるということと、“竹梅”に当たる製品も発表できたことだ。特に“竹梅”のところは、開発に力を入れたいと考えていた。

――それはエッジAIを見据えての戦略でしょうか。エッジAIでは、マイコンやAIアクセラレーターの存在は目立ちますが、FPGAはなりをひそめてしまった感があります。

Rogan氏 エッジAIは大きなトレンドになっている。われわれとしては、特に組み込み向け製品の開発をこれまでよりも強化したい。“竹梅”に当たる「Agilex3」「Agilex 5E(Agilex 5のEシリーズ)」「Max 10」は、特にエッジでの推論に使える製品だ。

 Agilex 3/5Eは、ハードウェアの中にTensorブロックが搭載されていて、テンソルの演算を効率よく実行できる。Alteraは、FPGAとAIの融合を意味する「FPGAi」をうたっているが、Agilex 3/5EはまさにFPGAiを体現する製品となっている。Max 10にも複数の乗算器が搭載されているので、IP(Intellectual Property)を実装することでAI演算を実行できる。

「Agilex 3」の概要[クリックで拡大] 出所:アルテラ 「Agilex 3」の概要[クリックで拡大] 出所:アルテラ
エッジAI向けのAgilex 3と「Agilex 5E」 エッジAI向けのAgilex 3と「Agilex 5E」。演算性能はAgilex 3がINT8で最大2.54TOPS、Agilex 5は同26TOPS(Eシリーズ)/56TOPS(Dシリーズ)[クリックで拡大] 出所:アルテラ

 エッジAIにおけるFPGAの利点は、やはり柔軟性だ。特に最近はニューラルネットワークの進化が速く、AI用プロセッサやアクセラレーターを開発しているさなかに、トレンドとなるニューラルネットワークが変わってしまうこともあり得るだろう。その点、FPGAであればその時々で最適なニューラルネットワークに合わせてチップを開発できる。

――FPGAの設計は難易度が高いという声が根強くありますが、ツールについてはいかがでしょうか。

Rogan氏 Alteraには「Quartus Prime」という強力なツールがある。AI開発者向けには、Quartus Primeと「FPGA AIスイート」を組み合わせて提供する。FPGA AIスイートは、AIモデルを、FPGAに実装できるIPに変換するツールだ。プッシュボタン一つで、AI推論アクセラレーターIPを生成できる。

 ザイリンクスからアルテラに移って痛切に感じるのは、Quartus Primeの使い勝手の良さだ。これは“身内”になるとよく分かる。XilinxにはFPGA向けの設計ソフトウェア「AMD Vivado」があり、これはXilinxが相当な投資をして開発したツールだ。Vivadoももちろん良いツールだが、Quartus Primeはそれを上回る。プッシュボタンの使い勝手が良く、QOR(Quality of Result)も高い。

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