インドで半導体/エレクトロニクス業界の活性化が加速している。2025年4月には、大手のエンジニアリングソリューション企業であるCyientが、ASICの設計開発を専門に手掛ける子会社Cyient Semiconductorsを設立した。
インドのエレクトロニクス業界は、新たな波を目の当たりにしている。同国は、グジャラート州やタミルナードゥ州、アッサム州にOSAT工場を設立することを発表し、半導体開発のスタートを切るグリーンフラッグ(緑旗)を振ったところだ。こうした勢いは複数のスタートアップにとって、AI半導体やメモリなどに比べ、勢いが低迷しているようにみえるファブレスパワー半導体市場を追求していく上で、後押しとなっている。
スタートアップの第1波として挙げられるのが、TessolveのRaja Manickam氏が設立したiVP Semiconductorと、Kedar Reddy氏率いるSagar Semiconductorsだ。両社ともディスクリートパワー半導体分野に注力する。しかしディスクリートパワー分野では、AlphaやOmega Semiconductorなどのメーカーにも見られるように、依然として利幅に関する懸念が残っている。長年にわたり業界に携わってきた関係者たちには、旧Fairchild Semiconductor時代が思い出されるのではないだろうか。
Cyient Semiconductorsは、参入したばかりの企業だが、注目すべき位置付けを確保している。Cyientが新しく設立した子会社である同社は、同業他社とは異なり、ディスクリートをめぐる競争には参加していない。その代わりに、Texas Instruments(TI)やMPS(Monolithic Power Systems)のようなメーカーと共に、外付けディスクリートを置き換えるのではなく駆動/補完する、アナログミックスドシグナルASICソリューションにターゲットを絞った分野を切り開いていくことを目指すという。
Cyientは、約30年前にエンジニアリングサービス企業として始動し、エレクトロニクス製品開発において非常に大きな進歩を遂げてきた。2023年には、エレクトロニクス製造ソリューションプロバイダーであるCyient DLMを設立している。その2年後となる2025年、マネージングディレクターであるKrishna Bodanapu氏は、パワーアプリケーション向けターンキーASICソリューションを専業とする子会社Cyient Semiconductorsの設立を発表した。CEOであるSuman Narayan氏率いるCyient Semiconductorsは、欧米をはじめさまざまな国/地域の産業機器および自動車分野の顧客をサポートする企業としての体制を整えている。
Narayan氏は米国EE Timesの独占インタビューで、半導体の独立子会社を設立した背景について「半導体は2032年までに、2兆米ドル規模の市場になるだろう。シリコンは、それぞれ異なるリズムに合わせて踊る。レジリエントなビジネスモデルを構築したいのであれば、サービス企業の考え方とは全く異なる方法でそれを実現しなければならない」と述べた。
Cyient Semiconductorsは、設計センターや確保した人材はベルギー(AnSemを買収)やオランダ、米国で維持するが、経営の中核は引き続きインドになるという。
Narayan氏は「われわれは、ASIC開発の大半をインドで行う。IP(Intellectual Property)ブロックは他から入手できるが、仕様からテープアウト、検証、製造テストに至るまでの全てをインドで包括的に行うことになる」と述べている。
こうした垂直統合型モデルに含まれるものとしては、Emerson(旧NI)との間で締結したポストシリコン検証プラットフォームのパートナーシップや、品質/納期を管理するためのドイツの自社用最終テスト施設などが挙げられる。
Cyient Semiconductorsは、カスタムASICソリューションの主要なターゲットを産業やデータセンター、自動車市場に定め、北米や欧州におけるエネルギーコストの増大や環境規制の強化に伴って懸念が高まっている、電力効率に大きな焦点を当てている。
Narayan氏は「われわれの主要な注力市場は、パワーASICだ。データセンターは100MW(メガワット)で稼働するため、電力効率を1%向上させれば50万米ドルのコスト削減につながる。今日の製造分野では、ロボットだけでも電力使用量全体の約8%を占めている」と述べる。
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