自動運転の分野では、高度なセンサーや通信ネットワークなどとつながる車載SoC(System on a Chip)がキーデバイスとなる。車載SoCは大量のデータをリアルタイムで処理しなければならない。このため、CPUコア、GPUコア、アクセラレーターコアなどを搭載しており、さまざまな演算処理を高速に実行する。
さらに車載SoCには、高い性能のAI処理やセンサーフュージョンの処理、電力効率の向上、充実したソフトウェア開発環境、高度なサイバーセキュリティ機能、などが求められる。
車載SoCの開発企業として先行しているのは、完成車両メーカーを除くとNVIDIA、Qualcomm、Mobileyeなどだ。NVIDIAはゲーム用高性能GPUを改良した高速処理に強い。Qualcommはクラウドとの接続技術やスマートフォン向けで培った多機能かつ低消費の制御技術を得意とする。なおNVIDIAとQualcommが開発してきた車載SoCの世代と主要な性能を以下の表にまとめた。
実装技術ロードマップでは、特に、NVIDIAの第4世代SoC「NVIDIA DRIVE AGX ORIN」(以降は「ORIN」と表記)を取り上げた。
「ORIN」はシリコンダイに12個の64bit Arm Hercules(A78AE) CPUコアとや1個のAmpereアーキテクチャiGPUコア、深層学習アクセラレーターなどを内蔵する。トランジスタ数は170億個に達する。機械学習の推論処理能力は200TOPS〜275TOPS(INT8)である。製造技術は7nm世代のCMOS技術、製造請け負い企業はSamsung Electronicsとされる。
高速な演算能力の副次的な産物として、「ORIN」の消費電力は非常に高い。放熱構造が重要となる。「ORIN」のSoCパッケージ上部には放熱ジェルを塗布してあり、放熱ジェルとヒートパイプを介してSoCの発する熱を効率よく逃がす。
(次回に続く)
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