前回に続き、「第2章第4節(2.4) モビリティー」の第1項、「2.4.1 世界に於けるEVの潮流」の後半部を紹介する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が2年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2024年度版 実装技術ロードマップ」(PDF形式電子書籍)を2024年6月に発行した。既に6月11日には、ロードマップの完成報告会を東京で開催している(本コラムの第462回で既報)
本コラムではこのほど、ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、前回の2022年度版に続いて今回の2024年度版も概要をご紹介できるようになった。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。
上記の経緯を経て、本コラムの第482回から、2024年度版のロードマップ概要をシリーズで報告している。第484回から前々回までは「2.2 メディカル・ライフサイエンス領域の市場分析とシーズ技術の活用」の概要を説明してきた。
そして前回から、「第2章第4節(2.4) モビリティー」の概要報告を始めた。「2.4 モビリティー」は、「2.4.1 世界に於けるEVの潮流」「2.4.2 自動運転・遠隔操作」「2.4.3 電動化技術」の3つの項目によって構成される。前回は「2.4.1 世界に於けるEVの潮流」の前半部をご報告した。今回は後半部をご紹介する。
「2.4.1 世界に於けるEVの潮流」は、「2.4.1.1 電動車略語の定義」「2.4.1.2 国際的なモビリティー環境規制・方針」「2.4.1.3 世界における環境規制動向」の3つのパートから成る。「2.4.1.1 電動車略語の定義」とEV(BEVとPHEV)の世界販売台数予測を前回ではご説明した。今回は「2.4.1.2 国際的なモビリティー環境規制・方針」以降の概要を述べていく。
日本電動化研究所によると2022年における世界の新車販売台数は8163万台で、国・地域別では中国が最も多く32.9%を占める。次いで米国が17.4%、欧州が16.3%とほぼ同じ水準であり、中国のおよそ半分の販売台数となる。日本は5.1%である。
同研究所によると2022年における日本の自動車メーカー(日系自動車メーカー)の生産台数は世界全体で2397万台に達する。日本における新車販売台数は前述の統計から計算すると416万台なので、生産台数は4倍強になる。生産の内訳は海外生産が最も大きく69.2%を占める。国内生産の中では国内向けが16.1%、輸出が14.8%である。海外生産と輸出を合計すると84.0%となり、販売の8割強を海外に頼っていることが分かる。従って海外、特に米国と欧州、中国における自動車向け環境規制に対応することが、日本の自動車メーカーにとって必須となる。
その環境規制は、10年後の2035年を重要な期限としていることが少なくない。米国カリフォルニア州の自動車環境規制「Advanced Clean Car II」では、2035年に新車販売が可能なのはBEV(バッテリを動力とする電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド自動車)、FCEV(燃料電池車)だけとなる。米国ではカリフォルニア州以外の17州が同様の規制をすべてあるいは一部採用しており、日本にとって最大の輸出国である米国の規制に対応することは当然の課題となっている。
またこの規制では2026年モデルから、カリフォルニア州の新車販売台数に占める一定の割合をBEVまたはPHEVとすることが求められる。その割合は2026年モデルが35%、2030年モデルが68%と、段階的かつ急速に上昇する。
欧州では「欧州Fit for 55」と呼ぶ温室効果ガス削減の包括的な取り組み(政策パッケージ)の中で、2035年以降に販売する新車を全てゼロエミッション車とする方針が打ち出された。ここでのゼロエミッション車にはBEVとFCEVだけが含まれ、PHEVとHEV、純ガソリン車は販売禁止となる。
中国では中国自動車エンジニア学会が発表した「省エネ・新エネ車技術ロードマップ2.0」で、2035年に自動車販売台数に占める新エネルギー車(NEV)の割合を50%以上にする、NEVの販売台数に占める純電動車(BEVとFCEV)の割合を95%以上にする、燃料電池車(FCEV)の保有台数を100万台以上にする、純ガソリン車は全てハイブリッド車に切り替える、などの目標を打ち出した。
なお日本では、2035年までに乗用車の新車販売を全て電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEV)とすること、商用車は8トン以下の小型車で2030年までに電動車比率を20〜30%、2040年までに電動車と脱炭素燃料対応車で100%とする目標が2021年に定められた(2021年6月18日の第12回成長戦略会議報告)。ただし8トンを超える大型商用車は2030年に目標を定めることになっている。
(次回に続く)
⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.