図7は、VLSIシンポジウムにおけるTechnology(デバイス・プロセス)分野およびCircuits(回路)分野の合計における、地域別の投稿論文数と採択論文数を示している。
まず図7Aの地域別投稿論文数の推移を見ると、2021年頃から中国の投稿数が急増していることが一目瞭然であり、2025年には何と283件に達した。一方、図7Bの採択論文数を見ると、中国は50件で、1位の米国(56件)、2位の韓国(55件)に次ぐ第3位となっている。しかし、ここ数年の中国の著しい成長を考慮すれば、2026年以降に1位へと躍進する可能性が高いと言える。
次に図8では、Technology分野およびCircuits分野の合計の採択論文数の機関別トップ11を示している。ここでも中国の存在感は際立っており、北京大学が4位(12件)、清華大学が6位(8件)、マカオ大学と復旦大学がともに11位(各5件)と、大きな躍進を遂げている。
要するに、VLSIシンポジウムという半導体国際学会において、中国の大学が急速に存在感を高めていることが見て取れる。加えて、今回の中国の大学の発表者には、(全ての発表を見たわけではないが)20代〜30代の若手研究者の姿が非常に多く見受けられた。すなわち、中国のヤングパワーがことしのVLSIシンポジウムを席巻していたと言ってもいいかもしれない。
そのような中で、北京大学のHeng Wu教授が登壇し、600人以上で満席となった聴衆を前に、次世代トランジスタに関する驚きの発表を行ったわけである。以下で、その詳細について紹介する。
北京大学のHeng Wu教授によれば、2004年に初めて3D Stacked CMOSのデモが行われてから、2025年で約20年目にあたるという(図9)。その間に、2005年にはFinFETの3D Stackedのデモに成功し、2009年には初めて12インチウエハーでの3D Stackedを欧州CEA-Letiが行った。
そして、2018年のVLSIシンポジウムで、imecがPMOSとNMOSを縦につくるCFET(Complementary FET)の発表を行った。このCFETが出てきたとき、多くのトランジスタの専門家が驚いていたことを思い出す。しかし、その後数年もすると、TSMCなどの先端ロジック半導体メーカーのロードマップには、GAAの次にCFETが書かれるようになってきている。つまり、FETは、FinFETとGAAを経て、CFETの時代を迎えるということが、半導体業界の共通認識になっていると感じられる。
ところが、そのような中で、北京大学のHeng Wu教授のグループが、2024年のVLSIシンポジウムで、Flip FET(FFET)という新たな3D Stackトランジスタの概念を発表し、2025年にはその動作に成功したことを発表した。
次のパートでは、Flip FETが、どのような技術背景のもとで考案されたかを示す。
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