Special Workshopの6番目は、SamsungのY.Y. Masuoka氏による「GAA “G”enuine “A“rchitecture for “A”I generation」というタイトルの発表であった。最初にこのタイトルを見たときは、「GAAのややこしいアーキテクチャの話か?」と訝しく思ったが、これはユーモアに富んだ語呂合わせであった。
Masuoka氏は、半導体産業においてGAAがいかにして新たな時代を切り開いてきたかを、非常に分かりやすく、かつ興味深く解説した。
Masuoka氏の調査によれば、VLSIシンポジウムでは、2002年に初めてGAAに関する発表が行われた(図2)。その後、GAA関連の発表件数は増減を繰り返したが、2020年以降は右肩上がりに増加し、2022年にはSamsungがGAAを搭載したロジック半導体の量産を開始した。さらに2025年には、TSMCやIntelもこれに続く見込みである。
このGAAの利点をSRAMで検証した結果が図3である。この図に示されているように、テクノロジーノードの進展に伴い、SRAMの集積度は各世代で1.5〜2倍に向上させる必要があるが、FETをプレーナ型からFinFETへ、そしてGAAへと移行することにより、SRAMセル高さを縮小できると同時に、トランジスタのWeff(有効チャネル幅)を増大させることができる。その結果、FinFETからGAAに切り替えることによって、SRAMの集積度を約20%向上させることが可能となる。
Masuoka氏は、このスライドの結論1として、「GAA is MUST for Scaling!(スケーリングにはGAAが不可欠!)」と述べた。
続いてMasuoka氏は、トランジスタ構造をFinFETからGAAへと移行することにより、SRAMのパフォーマンスを20%以上向上させ、ローカルミスマッチを10%以上低減し、スタンバイリーク電流を30%以上削減できることを示した(図4)。つまり、GAAを採用することによって、PPA ( Power(消費電力)、Performance(性能)、Area(面積))の全てを向上させることが可能となるというわけだ。
Masuoka氏は、このスライドにおける結論2として、「GAA is MUST for PPA Enhancement!(GAAはPPA向上に必須!)」と論じた。
さらにMasuoka氏は、2022年にSamsungが世界で初めてGAAを搭載したロジックの量産を開始し、2025年にはTSMCとIntelがそれに続く見込みであり、2027年にはRapidusもGAAの量産を計画していることを述べた。そして、結論3として、「Now GAA is in REAL!(今やGAAは現実のものとなった!)」と結んだ(図5)。
Masuoka氏は、最終的な結論として、GAAが今後の100年に向けた重要な転換点となるとし、「GAA to lead another Miracles!(GAAが新たな奇跡を導く!)」と力強く述べた(図6)。
そして最後に、「“G”reat thanks to “A”ll “A”udiences!!!」という見事な語呂合わせの謝辞で締めくくり、聴衆から大きな拍手を浴びた。
このように、約20年の歳月を経て、EE Times Japanの20周年と歩調を合わせるかのように、GAAの時代がいよいよ幕を開けた。では、GAAの次には何が来るのだろうか?
その有力な候補の一つとして、北京大学(Peking University)のHeng Wu教授が発表した「Flip FET」が大きな注目を集めた。しかし、その説明をする前に、少し話が脇道にそれるが、今回のVLSIシンポジウムでは「中国旋風」が吹き荒れたことに触れておきたい。
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