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サプライチェーン管理でAIをどう活用するのか期待と現実に大きなギャップ(1/2 ページ)

AIは明らかに将来有望であるにもかかわらず、エレクトロニクスサプライチェーンは依然として岐路に立っている。企業がAIソリューションを拡大/統合する上で根強く残る障壁に直面していることから、高い期待と日々の現実との間のギャップが拡大している。

» 2025年07月07日 11時30分 公開

 複雑性とスピードが最も重要なエレクトロニクス業界において、AIは革命をもたらす変革的な力として注目を集めている。しかし、大規模投資が行われ、大きく期待されているにもかかわらず、多くの企業は「サプライチェーンにとってAIの真の価値は、依然として大きな規模では明らかになっていない」という厄介な現実に直面しているのだ。

 米国の市場調査会社Gartnerの調査によると、最高サプライチェーン責任者(CSCO、以下サプライチェーンリーダー)全体の65%が「次なる“ビジネス時代”は、AIによって定義される」と確信しているという。さらに73%ものCSCOが「AIは今後3〜5年の間に、自社のビジネスにとって最も重要な変革技術になる」と考えている。

 グローバルネットワークを構築し、製品サイクルが非常に速いエレクトロニクスメーカーは、こうした可能性に対して特に敏感に反応する。リーダーたちは、AIがプロセスの自動化や、職務全体の連携強化、生産性の向上などを実現できると期待している。

 しかし現実には、その期待には届いていない場合が多い。多くの企業では、AIイニシアチブは依然として個々の機能でサイロ化され、機能横断的な統合をほとんど達成できていないなど、漸進的な成長にとどまっていることが報告されている。

 懸念すべきは、サプライチェーンリーダー全体の77%が「実施したAI投資のうち、サプライチェーン組織全体で機能横断的に統合された投資の割合は、0%またはごく一部にとどまる」と答えており、さらに過去1年間で数々の大規模AI導入を完了した企業は、わずか17%にとどまっているという点だ。

 その結果、期待と成果との間に持続的なギャップが生じ、サプライチェーンリーダーは「スケーラブルな真の価値を実証する」というプレッシャーを強く受けるようになっている。

AIを使う目的が「コスト削減」「効率化」のみではつらい

 このようなギャップの主な原因は、企業におけるAI活用のビジョンの定義にある。定義の焦点が、コスト削減と効率化のみに狭く絞られている場合が多過ぎるのだ。これらは重要ではあるが、AIの潜在的可能性に対して人為的な上限を設定してしまうことになる。

 さらなる変革的な成果を達成しているエレクトロニクス業界のリーダーは、AIビジョンを収益性だけでなく、成長やレジリエンス、新しいビジネスモデルの創出などにも拡大している。

 AIビジョンをトップライン(売上高)/ボトムライン(利益)の成長へと導くための具体的な方法の1つに、業務効率と戦略的発展の両方を反映させるKPI(重要業績評価指標)を取り入れるということがある。

 このメトリクスは、コスト削減と売上高成長の両方に結び付くため、サプライチェーン組織がAIからどのように価値を創出しているのかが分かりやすい。

 全てのAIイニシアチブを、新しい市場への拡大や、調達/物流全体のリスク管理、新製品発売の支援などの具体的なビジネス成果に結び付けることにより、企業は漸進的な改善の先へと進むことができるのだ。

 電子機器メーカーはこれまで、顧客からの受注への対応で優れた成果を達成することを目標に、大きな成果を上げてきた。例えば「On-Time In-Full(OTIF)配送」(納期通り/注文通りの配送)を向上させた他、現場作業者の意思決定時間を最大60%短縮したり、プロセス効率を30%向上させたことなどが挙げられる。

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