指タッチで磁性を制御可能に? スピンドープ強磁性を発見:応力発光半導体に磁性原子を添加
佐賀大学と東北大学、筑波大学、九州大学および、高エネルギー加速器研究機構らの研究グループは、応力発光半導体に希薄な磁性原子を添加することで、「スピンドープ強磁性」が現れることを確認した。
佐賀大学と東北大学、筑波大学、九州大学および、高エネルギー加速器研究機構らの研究グループは2025年8月、応力発光半導体に希薄な磁性原子を添加することで、「スピンドープ強磁性」が現れることを確認した。
研究グループは、素粒子の一種で電子に似た性質を持ちながら質量が電子の約200倍という「ミュオン」を用い、応力発光のメカニズムを研究している。この中で、「真性希薄磁性」を発見したという。
今回は、代表的な応力発光物質である「EuxSr1-xAl2O4(x=0.2〜2%)」において、4化学結合原子以上という極めて長距離の磁気カップリングが存在することを明らかにした。その上で、強磁性相に移転することを確認した。
さらに、光を照射しながら行った磁化測定により、「ポーラロン」が希薄磁性の発現機構に関わっていることを明らかにした。このことは光を照射することで、希薄磁性半導体の制御が可能なことを示すものだという。指タッチのような加圧によっても磁性を制御できるとみている。
EuxSr1-xAl2O4(x=2%)での新規磁気的挙動[クリックで拡大] 出所:佐賀大学他
応力発光結晶格子で、酸素欠陥にトラップされたポーラロン電子の働きにより、希薄磁性原子間に長距離磁気カップリングが発生[クリックで拡大] 出所:佐賀大学他
研究グループによれば、現在は強磁性の発現が低温時に限られているという。ポーラロン密度を増やすなど構造を制御できれば、転移温度を大幅に向上させることが可能になるとみている。
ダイヤモンド半導体の社会実装急ぐ 佐賀大とJVCケンウッド
佐賀大学とJVCケンウッドが、次世代の高周波パワー半導体として期待されるダイヤモンド半導体の社会実装に向けた共同研究を開始する。佐賀大学は、JVCケンウッドから共同研究契約を通じた支援を受け研究を促進するとともに、JVCケンウッドに主にマイクロ波帯、ミリ波帯通信用半導体の技術情報を提供する。
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佐賀大学、ダイヤモンド半導体パワー回路を開発
佐賀大学は、ダイヤモンド半導体パワー回路を開発し、高速スイッチング動作と長時間連続動作が可能なことを確認した。Beyond 5G基地局や通信衛星、電気自動車などの用途に向け、実用化研究を加速させる。
Ge半導体で「電気が流れやすくなる」方法を開発
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「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」 エネルギー効率が50倍
東北大学とアイシンは、大容量の磁気抵抗メモリ(MRAM)を集積したエッジAI向け実証チップとして「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発した。従来チップに比べ、エネルギー効率を50倍以上に、起動時間を30分の1以下に、それぞれ改善できることを確認した。
シャーペンの芯が高品位電子ビームの発生源に
筑波大学は、シャープペンシル芯の破断面を完全にグラファイト化することで、高品位な電子ビームの発生源として応用できることを実証した。低い電界強度で、しかも極高真空ではない環境でも、安定した放出電流が得られるという。
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