接着剤や化学工業製品を手掛ける積水フーラーは、現在基板保護に用いるコンフォーマルコーティングを中心に、エレクトロニクス機器向け事業に注力している。同社の事業内容やコンフォーマルコーティングの特徴について、積水フーラー 社長 スコット・パーギャンディー氏らに聞いた。
接着剤や化学工業製品を手掛ける積水フーラーは現在、基板保護に用いるコンフォーマルコーティングを中心に、エレクトロニクス機器向け事業に注力している。同社の事業内容やコンフォーマルコーティングの特徴について、積水フーラー 社長 スコット・パーギャンディー氏、技術本部 機能材技術部長 染谷悠氏、機能材事業本部 プロダクトマネジャー 澁谷健太氏に聞いた。
積水フーラーは2005年、積水化学工業と米国の接着剤専業メーカーH.B. Fullerの合弁会社として設立された。浜松市と滋賀県甲賀市に研究開発/製造の拠点を構え、日本市場向けに接着剤やシーリング材、化学工業製品の開発/製造/販売を行っている。
主な事業領域は、紙おむつなどの衛生材料や包装/紙加工製品、住宅建材、そしてエレクトロニクス機器に向けた機能性接着剤だ。
パーギャンディー氏は「機能性接着剤は社内ではまだ新しい事業領域で、売上高に占める割合は2割程度だが、現在最も大きく成長している」と説明する。ターゲットは自動車や民生機器だ。
機能性接着剤事業では、親会社であるH.B. Fullerの製品の日本向け展開と積水フーラーでの自社開発を行っている。初めての自社開発製品として2020年ごろから展開しているのがコンフォーマルコーティングだ。
「H.B. Fullerの製品を提案することもあるが、日本企業の品質へのこだわりや日本の法規制に合わせるにはローカルでの製品開発が重要になる」(澁谷氏)
コンフォーマルコーティングとは電子部品を実装した基板に専用の液剤を塗布し、湿気や腐食、ホコリなどから保護するものだ。屋外や温浴施設での電子機器利用のニーズによって注目度が高まっていて、エアコンの室外機やウェアラブルデバイスなどに採用されている。
積水フーラーが提供しているのは主に、紫外線(UV)照射で硬化させるUVコンフォーマルコーティングと、熱可塑性のホットメルトコンフォーマルコーティングだ。いずれも溶剤を含まない。溶剤を含んだコーティング剤は粘度が低く塗りやすさが好まれていたが、揮発性有機化合物(VOC)の環境負荷を問題視する傾向が高まっていて、工場内で保管する数量などへの規制もある。積水フーラーのコーティング剤はこれに対応して開発したもので、VOCの排出量がゼロになるほか、乾燥炉で溶剤を揮発させる工程も不要になる。
「現在はまだ溶剤を含むコーティング剤が主流だが、今後無溶剤タイプの採用が進んでいくだろう。代替材料の候補は多数あるが、環境負荷や電子部品への影響が指摘されるものもあり、一長一短だ。そうした中で積水フーラーの製品は『1番バッター』になれるチャンスがあると見ている」(澁谷氏)
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