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「標準化を待てず」 HBMで変わるメモリ技術サイクル独自アーキテクチャで先行(1/3 ページ)

広帯域メモリ(HBM)の技術進化が加速している。GPUの進化に合わせるために、カスタマイズや独自アーキテクチャの採用が求められるようになっていることもあり、標準化の完了を「待っていられない」状態になりつつある。

» 2025年09月03日 11時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

標準規格は「ついていくのがやっと」

 AIによってけん引されているデータ成長が指数関数的に加速するに伴い、広帯域メモリ(HBM)の採用も同じく急増している。

 しかし、HBMは依然としてプレミアムなメモリであり、簡単に実装できるような技術ではない。NVIDIAがGPU開発を加速させていく中、標準規格が遅れずついていくのに苦労しているという状況にある。これはつまり、HBMが引き続きGPUやアクセラレーターの普及による恩恵を受けていくためには、カスタマイゼーションが重要であるということだ。

 市場調査会社であるDell’Oro Groupが最近発表したレポートによると、2025年第1四半期のサーバ/ストレージコンポーネント市場は、AI拡大が続いたことを受け、前年比成長率が62%に達したという。その中には、HBMやアクセラレーター、NiC(Networking Interface Cards)などに対する需要の急増も含まれている。

 Dell’OroのシニアリサーチディレクターであるBaron Fung氏は、米国EE Timesのインタビューで「NVIDIAのGPU『Blackwell』や、大手クラウドサービスプロバイダー各社が展開したカスタムアクセラレーターなどが、AIアクセラレーター市場をけん引している」と述べる。

 Dell’Oroの「Data Center IT Semiconductors and Components Quarterly Report(データセンター向けIT半導体/コンポーネントの四半期レポート)」によると、HBM市場ではSK hynixが売上高シェア64%で首位を確保し、Samsung Electronics(以下、Samsung)とMicron Technology(以下、Micron)がその後に続くという。

 Fung氏は「HBMの採用が2022年に大きく拡大し始めたのは、トレーニングに特化したGPUが成長したからだ。AIサーバやアクセラレーターの導入率も増加している」と述べている。

 「AIサーバの売上高は過去数年間で、市場全体の20%から約60%まで増加し、それに伴いGPUの性能やHBMの容量は飛躍的に高まっている。こうした成長によってHBMの供給に圧力がかかり、ベンダー各社は少なくとも1年前から予約がいっぱいの状況だ」(Fung氏)

HBMで先行するSK hynixとMicron、後を追うSamsung

 Samsungは、HBMチップ供給を求める要望への対応に悪戦苦闘し、SK hynixやMicronの前進を許す結果となった。Micronは2026年に、2048ビットインタフェースを備える次世代HBM「HBM4」の量産を開始する予定だという。

 Micronは、その数年後には「HBM4E」を発表し、ベースダイをカスタマイズ可能なオプションを提供する予定だ。同社によると、2025年会計年度第3四半期のHBM売上高は前期比で約50%増加し、年間ランレートは60億米ドルに達した。

Micronが2025年6月に発表した「HBM4」の外観[クリックで拡大] 出所:Micron Technology Micronが2025年6月に発表した「HBM4」の外観[クリックで拡大] 出所:Micron Technology

 Fung氏は「関税によって増大する不確実性が、サプライチェーンに重層的な複雑さをもたらし、それがHBMの価格にも影響を及ぼすだろう」と述べている。

 高性能コンピューティング(HPC)のニーズに応えるには、容易に入手可能なHBMの代替がある。Fung氏は「一部の低価格帯GPUはGDDRを使用しているが、HBMや密接に統合されたGPUが提供するような高速インターコネクトは得られないだろう。他の選択肢としては、トレーニングモデルストレージに向けた低レイテンシDRAMやSSDなどがあるが、トップクラスの性能やレイテンシを実現するにはHBMが不可欠だ」と述べる。

 「GPUメーカーがHBMベンダー向けにロードマップを作成しており、供給が制約される中、先頭を行くSK hynixとその後を追うSamsung、Micronの大手主要3社には、強力な市場が広がっている」(Fung氏)

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