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300℃で使用可能なパラジウム合金水素透過膜を開発高純度水素精製で加熱設備が不要

田中貴金属工業は、300℃という低温領域で使用できるパラジウム(Pd)合金水素透過膜を開発、サンプル出荷を始める。高純度の水素精製工程で、加熱用の設備を追加する必要がなくなり、設備コストの削減につながるとみている。

» 2025年09月16日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

PdCu39に着目、独自の熱処理法で完全なbcc相を実現

 田中貴金属工業は2025年9月、300℃という低温領域で使用できるパラジウム(Pd)合金水素透過膜を開発、サンプル出荷を始めると発表した。高純度の水素精製工程で、加熱用の設備を追加する必要がなくなり、設備コストの削減につながるとみている。

 高純度の水素を精製するには、メタノール水から生成した水素ガスを、水素透過膜が組み込まれたモジュールで精製するのが一般的である。ところが、PdCu系合金膜のなかで水素透過性能が最も高いといわれるPd含有率60%、Cu含有率40%の合金「PdCu40」は、400℃以上の温度領域でないとその性能が発揮されないという。このため従来は加熱用の設備を新たに導入するなど、追加の対応が必要であった。

PdCu39の外観とPd系水素透過膜による水素透過メカニズムPdCu39の外観とPd系水素透過膜による水素透過メカニズム PdCu39の外観とPd系水素透過膜による水素透過メカニズム[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業

 そこで今回は、Pd含有率61%、Cu含有率39%の合金「PdCu39」に着目した。独自の熱処理方法を用いることで、完全なbcc相(体心立方格子構造を持つ金属の相)を実現することが可能となった。これにより、高い水素透過性能を備えつつ、300℃前後の低温で水素を精製できるPd合金水素透過膜の開発に成功した。

PdCu合金のPd/Cu比率と水素透過係数@300℃水素透過性能の温度依存性 左はPdCu合金のPd/Cu比率と水素透過係数@300℃。右は水素透過性能の温度依存性[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業
PdCu39の熱処理条件によるbcc相/fcc相比率の差異 PdCu39の熱処理条件によるbcc相/fcc相比率の差異[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業

 なお、評価用サンプル品は板厚が最小10μm、板幅が最大120mmのシート状(角や円)で提供される。

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