田中貴金属工業が、パワー半導体用パッケージ製造でのダイアタッチ向けのシート状接合材料「AgSn TLPシート」を開発した。低温で接合後に耐熱温度が480℃に上がるうえ、低加熱での接合も可能といいった特長を有し、最大20mmと大面積接合にも対応する。
田中貴金属工業は2025年1月23日、パワー半導体用パッケージ製造でのダイアタッチ向けシート状接合材料「AgSn TLPシート」を開発したと発表した。低温で接合後に耐熱温度が480℃に上がるうえ、低加熱での接合も可能といいった特長を有し、最大20mmと大面積接合にも対応。「電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、産業インフラ等で高まる大電流対応のパワー半導体ニーズに貢献する」としている。
AgSn TLPシートは、銀(Ag)とすず(Sn)を圧縮成形した独自開発のシート状接合部材で、250℃で液相拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding:TLP接合)ができ、接合後にAgとSnがAg3Snとなることで耐熱温度が480℃まで上がるという特長を有している。同社は2024年6月にドイツ・ニュルンベルクで開催された世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2024」において、その概要をパネル展示していた。
AgSn TLPシートは、パワー半導体パッケージ製造において多く用いられている高鉛はんだやSACはんだと比較し高い耐熱性を有する。3.3MPaの低加圧で接合が可能で、接合強度は最大50MPaを維持。銅(Cu)やニッケル(Ni)、Agなどのさまざまな被接合材に対応が可能だという(下図)。また、鉛フリーの接合部材であることや、3000サイクルのヒートサイクル試験を通過した高接合信頼性も特長としている。
さらに、AgSn TLPシートは最大20mmまでの半導体チップ接合に対応。近年ニーズが高まる、「大電流タイプの大型シリコンチップ接合を可能にする」としている。
なお、パワー半導体用ダイアタッチ材料としての使用に加え、TIM材(熱伝導材料)の代替材料としての使用も想定。同社は「半導体パッケージ製造においては、熱伝導率が高いさまざまな材料が開発されてきたが、TIM材の熱伝導率の低さがトータル熱設計のネックとなっていた。AgSn TLPシートは、50mm以上のTIM材の大面積接合が可能、かつ高い熱伝導率をもつ接合材料で、半導体パッケージ製造における熱マネジメントへの貢献が期待できる」と説明している。
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