サンケン電気が開発する横型GaNデバイスのベースとなるのが、パウデックが有していたPSJ(Polarization Super Junction:分極超接合)技術だ。一般的なGaN HEMTでは、電界集中に起因する耐圧限界や電流コラプス(スイッチング時に電流が流れにくくなる現象)などの課題があった。PSJ構造では、GaN/AlGaN/GaNというヘテロ接合による分極特性を利用したもので、ゲート‐ドレイン間の電界強度が一定になり、電界集中を抑制可能。これによって高耐圧化が容易な他、コラプスの低減によってオン抵抗の上昇を抑制、ゲート・ドレイン間を狭くでき低オン抵抗化が可能、といったメリットが得られる。
サンケン電気は買収前の2023年から既にパウデックとの共同開発を進めていて、高耐圧横型GaN(横型PSJ-GaN)の実現性を確認していたという。買収の理由については「早期の製品化、上市を目指すべくパウデックを買収することが、開発スピードの加速に最適と判断した」と説明している。
同社は、横型PSJ-GaNについて、小電流から中電流領域をカバーする製品の開発を進めている。具体的には、小電流領域では白物/民生向けGaN搭載電源ICを2026年度に、中電流領域では白物/産機向けIPMを2028年度に量産を開始する予定だという。
また計画では、GaNパワーデバイスで主流の650V耐圧に加え、900Vや1200Vや1700Vなどの高耐圧品を展開していく予定だ。半貫氏は「サファイアとPSJ構造を生かせるのは高耐圧だ。Siではおそらく900V程度が限界となるだろう。当社はサファイアでなければできない領域、1200Vや1700Vデバイスが今後産業用途や車載で求められてくると見込まれる。その辺りに、われわれが戦える大きな市場があると見ている」と語った。
一方、この領域では炭化ケイ素(SiC)デバイスと競合する部分が出てくる。この点については「社内でも現在議論があるところだが、将来的に差別化を図っていく」としたうえで「GaNのスペックをフルに活用できれば、SiCと同等以上のコストパフォーマンスを実現できると考えている」と強調した。
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