NXP SemiconductorsがエッジAI向けの開発ツールを刷新した。新しく発表した「eIQ Agentic AI Framework」は自律型AIをエッジで実現するためのツールで、プロトタイピングや評価も迅速に行える。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2026年1月、エージェントAIをエッジで実現するための開発ツール「eIQ Agentic AI Framework」を発表した。これに伴い、NXPの日本法人であるNXPジャパンは同年2月に記者説明会を開催し、eIQ Agentic AI Frameworkを含む、同社のエッジAI開発ツールを紹介した。
NXPジャパンの代表取締役社長 兼 本社シニア・ヴァイス・プレジデントを務める和島正幸氏は冒頭、「手元のデバイスでAI機能を持つのが必須になる時代になった」と強調した。
生成AIをはじめとするAIは急速に普及しているが、和島氏は「演算と通信のコストや、データセンターの電力問題などを考慮すれば、全てのIoT機器がクラウドに接続されてAIサービスが展開されていくというのは考えにくい。セキュリティやレイテンシの問題もある。当初は正直なところ、エッジAIの波が本当に来るのか個人として懐疑的だったが、エネルギーコスト、演算コスト、通信コスト、そしてセキュリティという4つの要素を考えただけでも、AI技術が必ずエンドの端末に展開されると確信している」(和島氏)
こうした見立ての下、NXPはエッジAI向け半導体を拡張してきた。2025年10月にはNPU(Neural Processing Unit)を手掛ける米Kinaraの買収が完了している。組み込み機器に適したアーキテクチャを持つKinaraのNPU「Ara」がポートフォリオに加わったことで、生成AIから一歩踏み込み、エージェントAIをエッジにも展開するソリューションにも力を入れる。そのため、eIQ Agentic AI Frameworkを含め、開発ツールの強化と刷新を図った。
NXPジャパン インダストリアル&IoT営業統括本部 市場開発部のシニア・ソリューション・スペシャリストである上釜悠聖氏は、組み込み分野でもエージェントAIがグローバルトレンドになっていると話す。「ロボットがペットボトルを取る動作を例に挙げると、まずは目の前にある物がペットボトルだと理解(Sense)し、何らかの条件に応じてそのペットボトルを手に取るかどうかを考える(Think)。取ると判断したら、モーターを動かしてペットボトルを取る(Act)。こうしたSense、Think、Actという一連の動作を自律型AIで動かすエージェントAIは、組み込み業界でも注目されている」
上釜氏は「ただし、市場にあるチップを組み合わせて、こうしたエッジでのエージェントAIを実現することはハードルが高い。そこで今回われわれは、NXPのデバイスを100%生かせるソフトウェアソリューションを用意した」と続ける。
NXPはSenseからThink、Actの動作を行うエージェントAI(エッジで動作するもの)をNXPのハードウェアとソフトウェアで開発できるようにすることを狙う。Senseの部分はNXPのアプリケーションプロセッサ「i.MX」が、Thinkの部分はKinaraの「Ara-2」が、Actの部分はNXPのマイコン「MCX A」がそれぞれ担う[クリックで拡大] 出所:NXPジャパンまずは、NXPの既存のエッジAI開発ツールを、クラウドツール「eIQ AI Hub」としてまとめた。NXPは、画像処理用、センサーを使った異常検出用、チャットボット生成用など、さまざまなエッジAI開発ツールを提供している。それらをeIQ AI Hubに統合することで、一つ一つのツールをダウンロードすることなく、クラウド環境で開発や検証を行えるようになる。
従来提供してきた「eIQ AI Toolkit」もアップデートした。eIQ AI Toolkitは、NXPのプロセッサでAIモデルを動かすためのコンパイラツールで、eIQ AI Hubの一つに含まれる。こちらもクラウドで使用できるようになる他、モデルの変換フォーマットを、従来のTensorFlow LiteやONNXだけでなくPyTorchもサポートできるようになった。さまざまなモデルを検証しやすくなる。
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