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ソニーが「業界最速」X線CMOSイメージセンサー量産2万6100fpsと低ノイズ性能を両立

ソニーセミコンダクタソリューションズが、理化学研究所と共同で「業界最速」(同社)の撮像と低ノイズ性能を両立するX線CMOSイメージセンサーを開発した。X線検査/計測機向けに商品化し、量産出荷を開始する。

» 2026年06月09日 11時00分 公開
[永山準EE Times Japan]

 ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)は2026年6月9日、「業界最速」(同社)の撮像と低ノイズ性能を両立するX線CMOSイメージセンサーを商品化し、量産出荷を開始すると発表した。理化学研究所(以下、理研)と共同開発した製品で、従来のセンサーでは両立が困難だった、広いダイナミックレンジでの高精度なX線の総エネルギー量の測定と光子単位でのエネルギー情報の取得を、1つのセンサーで実現した。X線検査/計測機向けに展開する。

IMX711 IMX711[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

AI導入などで高まる性能要求に向けて

 X線を用いた検査/計測は、電池や半導体などの先端デバイスの検査および材料開発や生命科学研究における科学計測まで、幅広い分野において普及している。そして、AIを含むデータ解析技術の進化に伴い検査/計測手法も高度化する中、X線センサーにおいても、効率的に信頼性の高いデータを取得できる性能が求められているという。

 既存のセンサーには、「光子計数型」と「積分型」の2つの方式がある。「光子計数型」は、X線の信号量を閾値に応じて0/1で処理する方式で、閾値以下のノイズが出力されないため低照度での測定精度が高いが、照度が上がると光子の数え落としが発生するなどの課題がある。一方「積分型」は、光子エネルギーを積分したエネルギー量を信号出力するが、ノイズの影響によって、特に低照度下での測定精度の低下が課題となっているという。

 今回、SSSがこうした課題解決に向けて開発したのが、有効28万画素の3.73型直接変換積分型X線CMOSイメージセンサー「IMX711」だ。

 なお同製品の開発は理研と共同で実施。理研の初井宇記博士によって発案された画素構造をもとに、実用的なX線イメージセンサーとして成立させるために必要な、高感度化および高いX線照射耐性と高電圧耐性の実現などの技術開発に共同で取り組んだという。またSSSは、回路技術のほか、製造プロセスやパッケージング技術を開発することで、同製品の量産を実現したとしている。

IMX711は先端デバイスのインライン検査や材料科学/生命科学における科学計測へ応用可能だとしている(画像はイメージ) IMX711は先端デバイスのインライン検査や材料科学/生命科学における科学計測へ応用可能だとしている(画像はイメージ) 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

業界最速と低ノイズを両立した撮像

 IMX711では、SSS独自の回路技術などによって「業界最速」という最大毎秒2万6100フレームでの高速撮像を実現。1フレーム当たりの電荷の蓄積量を低減することで、従来よりも高い飽和特性を実現。同時に積分型センサーの課題でもあるランダムノイズを34e-rms(1画素当たりのランダムノイズが電子34個程度)※)まで低減したという。これによって微弱なX線信号もノイズに埋もれず検出でき、X線光子単位でのエネルギー測定を可能にした。

 SSSは「これらの特長によって、全ての画素で低照度から高照度までX線の総エネルギー量を正確に測定できるため、照度差が大きくなる検査/計測にも単一センサーで対応し、装置のスループット向上やダイナミックレンジ拡大に寄与する」としている。

※)評価数値。センサー内部の動作温度が20℃の環境下におけるセンサー有効領域内の画素の平均値より算出。性能保証値は60e-rms。

高エネルギー分解能で元素レベルの分析にも

 IMX711では積分型方式を採用していて、事前の閾値設定を必要とせずに光子のエネルギー情報を取得可能だ。さらに、ノイズや信号のばらつきを抑えた読み出しによって、高いエネルギー分解能を実現。光子エネルギー値の違いを明確に捉えることができるという。SSSは「高エネルギー分解能で信頼性の高いデータ取得を可能にすることで、元素レベルでの構成要素の違いやわずかな状態変化を定量評価する構造解析や材料分析など、従来は複数回の測定を要していたような高度な検査/計測の精度向上や効率化に寄与する」と述べている。

 また全画素の測定データを収集し、空間情報と組み合わせたり、特定のエネルギーデータを抽出したり、さまざまな条件で後段処理することで、検査/計測の多機能化も実現可能だとしている。

 応用が想定される具体例としては、電池/半導体などの高速動体検査における定量精度やスループットの向上や、光子エネルギーの違いと二次元分布を可視化する元素マッピング、光子エネルギー情報と空間情報の活用による結晶構造解析と元素分析の同時測定などを挙げている。

元素マッピングのイメージ画像。対象物の構成元素をエネルギー値から推定し、色分けして可視化される 元素マッピングのイメージ画像。対象物の構成元素をエネルギー値から推定し、色分けして可視化される[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ(出典は理化学研究所)
<IMX711の主な仕様>
型名 IMX711-AABY
イメージサイズ 対角59.8mm(3.73型)
27.88mm(H)×52.85mm(V)
有効画素数 384(H)×728(V)- 16※)
約28万画素
ユニットセルサイズ 72.6μm(H)×72.6μm(V)
センサー材質 シリコン
センサー厚 650μm
フレームレート
(全画素読み出し)
26.1k fps(Mode-A)
17.4k fps(Mode-C Cont, HDR)
ノイズ Typ 34e-rms
Max60e-rms
飽和計算率(12keV) 0.94 Mcps/pixel(Mode-A)
33Mcps/pixel(Mode-C Cont)
600Mcps/pixel(Mode-C HDR)
出力インタフェース SLVS-EC
パッケージ Chip Size Package(CSP):30.36mm(H)×69.74mm(V)
※)Black pixels

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