Elon Musk氏(イーロン・マスク氏)が発表した半導体複合施設「TeraFab」の建設プロジェクトが、大きな話題を呼んでいる。Musk氏はTeraFabで、半導体製造の「再定義」を狙っているのだろうか。
2026年3月21日(米国時間)、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、Tesla、SpaceX、xAIの支援を受けて米国テキサス州オースティンに半導体複合施設「TeraFab」を建設することを発表した。同施設は、2nm世代のロジック、メモリ、先進パッケージング、マスク製造の全てを「1つ屋根の下」に集約することを目指すという。
その野心は極めて大きい。Musk氏は、年間1テラワット規模のAI演算能力の実現を目標としている。これは、今日の最先端工場の生産能力をはるかに超える規模だ。
半導体コミュニティーからの反応は予想通り懐疑的で、一見したところ、そう考えるのは正当に思える。最先端ファブ1つだけでも、250億〜300億米ドルのコストが掛かる。Morgan Stanleyは、現実的には、TeraFabの第1フェーズのコストは350億〜450億米ドルに近いと見積もっている。アナリストらは「従来の想定に基づくと、Musk氏が示唆する規模に到達するには、数十、場合によっては100以上のファブが必要で、投入資金は数兆米ドルに上るだろう」と指摘している。ASMLの高NA(開口数)極端紫外線(EUV)の生産能力の多くは、今後数年分が既に割り当てられている。新ノードにおける歩留まり率は通常、50〜60%未満から始まり、成熟するまでにかなりの時間を要する。また、そうしたプロセスを運用するために必要なエンジニアリングの専門知識を構築するには、数年、場合によっては数十年かかる。
もしTeraFabが、単に後発の新規参入者が建設した、より小規模な別のファブにすぎないなら、こうした批判は正しい。だが、それではTeraFabを建設する意味がない。
そこで浮かび上がるのが興味深い疑問だ。もしTeslaが「何か違うもの」になろうとしているわけではないとしたらどうだろうか?
SpaceXはロケット工学の物理法則を変えたわけではない。同社が変えたのは開発モデルだ。このモデルでは、迅速なバージョンアップと垂直統合を行い、ロケットをプログラムではなく製品として扱う。よく引用される試算によると、同社が開発したロケット「Falcon 9」は従来の想定コストのほんの一部で開発されたとされ、現在開発中の「Starship」は打ち上げコストを桁違いに引き下げることを目指している。
Teslaも同様の道をたどっている。既存企業と同じ土俵で競争するのではなく、ソフトウェア、垂直統合、継続的なバージョンアップを中心に工場を再定義したのだ。Teslaは従来の自動車業界の運営モデルに一度も合わせることなく、時価総額で世界で最も価値ある自動車メーカーになった。
どの分野であっても、Musk氏の採るパターンは一貫している。同氏は、アーキテクチャを変えることで、基準を変えてきたし変えようとしている。
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