理想的な電源は、常に一定の電圧を全ての半導体チップに供給する。実際には、このようなことはあり得ない。負荷の変動に対してわずかに遅れて電流の供給量を制御しており、供給電流の変化によって電源電圧は常に変動している。
電源電圧の変動は主に、電源電流の時間的な変動によって生じる。負荷が変動するサイクル(周波数)はクロックサイクル(クロック周波数)と、論理回路やメモリ回路などのスイッチングサイクル(スイッチング周波数)および、これらの高調波の重なりとなる。
電源インピーダンスの値は周波数の上昇とともに急速に高まる。そして共振点(最大インピーダンスあるいはピーク値)を過ぎると、周波数の上昇とともにインピーダンスは低下する。電源インピーダンスのピーク値は、なるべく低くすることが望ましい。
何も対策しない電源供給網の電源インピーダンスは例えば、10kHzを基準にすると1MHzではおよそ10倍、数十MHzではおよそ100倍に達する。
CoWoS-Lタイプの先進パッケージにおける電源インピーダンスの低減。左はパッケージの構造図。右は電源供給網(PDN)のインピーダンス(縦軸)と周波数(横軸)の関係。ベースライン(赤色)は通常の特性。MIM(水色)とeDTC(黄緑色)はキャパシターの挿入によるインピーダンス低減策を講じた特性[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)高周波インピーダンスを下げるためには通常、キャパシターあるいはコンデンサーが使われる。CoWoS-Lタイプの先進パッケージでは、SoC(System on a Chip)チップの内部にMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシター群を作り込んだり、LSI(Local Silicon Interconnect)チップの内部にeDTC(embedded Deep Trench Capacitor)群を作り込んだりする。
MIMキャパシター群を組み込んだ電源供給系の最大インピーダンスは対策前の約6分の1に、eDTC群を作り込んだ電源供給系の最大インピーダンスは対策前の約10分の1に減少する。またキャパシターによるインピーダンスの低減効果はピーク周波数よりも高い領域で大きい。10MHz〜100MHzの領域では、対策前と比べてMIMキャパシターでは約10分の1、eDTCでは約100分の1とインピーダンスが大幅に小さくなる。
(後編に続く)
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