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半導体主権の「現実解」 GFとQualinxが欧州域内製造フロー実証GNSS SoCを製造(1/3 ページ)

GlobalFoundries(GF)とQualinxは、GNSS(全球測位衛星システム) SoC(System on Chip)を欧州内の製造フローで完成させた。機密性の高い設計データやマスク、ウエハーを欧州の管理下に置く取り組みで、半導体主権の具体的な一歩といえる。しかし、EDAや材料などには課題が残る。

» 2026年06月29日 13時30分 公開
[Pat BransEE Times]

 欧州の半導体主権の野心はこれまで、政策文書や補助金、ファブ建設の発表という形で語られることが多かった。しかし今回、GlobalFoundries(GF)とオランダのスタートアップであるQualinxは、より具体的な事例を示した。それは、機密性の高い設計データや物理的な材料を欧州から流出させずに、欧州の製造フローで完成させた、セキュリティ上極めて重要なチップである。

オンショア化能力を実証 防衛などの重要用途に向け

 両社によると、QualinxのGNSS(全球測位衛星システム) SoC(System on Chip)「QLX3xx」は、GFのドレスデン工場で「欧州初の完全なエンドツーエンド半導体製造フロー」(Qualinx)を完了したという。同製品は、GFのFDX技術をベースに製造され、航空宇宙、防衛、重要インフラにおけるセキュアな測位、航法、タイミングアプリケーションをターゲットにしている。

Qualinxの「QLX3xx」 Qualinxの「QLX3xx」[クリックで拡大] 出所:Qualinx

 ただし、このマイルストーンは正確に捉える必要がある。QualinxのCEOであるTom Trill氏とGF EMEAのゼネラルマネジャーを務めるManfred Horstmann氏は、米EE Timesの独占インタビューで「欧州が半導体の完全な自立を達成したわけではない」と明言した。GFとQualinxが実証したと述べているのは、より限定的で実用的な成果だ。すなわち、グローバルなサプライチェーン上にデータやマスク、ウエハーが流出してはいけない用途のチップに向けて、信頼できるルートを示したということだ。

Qualinx Tom Trill氏 Qualinx Tom Trill氏 出所:Qualinx

 Trill氏は「私の見解では、GFがドレスデンで成し遂げたのは、完全なオンショアサプライチェーンを構築する機会の創出だ。これは完全なオンショア設計チェーンとは異なる」と述べている。

 「完全なオンショア設計チェーンの構築は、オンショアサプライチェーンの構築とは全く異なる課題だ。EDAはほぼ独占状態もしくは寡占状態であり、切り替えコストが極めて高額になるからだ。つまり、完全なオンショアサプライチェーンの能力は今回実証されたが、設計チェーンには今後も注意が必要だ」(Trill氏)

 Trill氏は「反競争的行為について述べているわけではない」と強調した。同氏は「QualinxはEDAベンダーから公正に扱われ、十分な支援を受けている」と述べ、「問題は構造的だ。EDAは高度に集中したグローバル市場であり、いったん既存のツールを中心に設計フローが構築されると、代替ツールを採用する際のコストや混乱は大きい。そのため、たとえ半導体主権の懸念から欧州の代替ツールが戦略上魅力的であっても、採用は容易ではない」と説明した。

EDAベンダーは米国中心 残る設計チェーンの課題

GlobalFoundries Manfred Horstmann氏 GlobalFoundries Manfred Horstmann氏 出所:GlobalFoundries

 GFとQualinxは、先端半導体に必要な全てのツール、材料、IPブロック、設計ソフトウェアを欧州が自前で用意できるようになったと主張しているわけではない。両社が主張しているのは、データレジデンシー、トレーサビリティー、信頼性をプロセスに組み込んだ、管理された経路を欧州内に構築できるということだ。

 Horstmann氏は、このフローについて「GFがドレスデンを中心に構築してきた欧州での事業基盤の成果だ」と説明する。プロセスは、Qualinxのような顧客が、チップの物理レイアウトを記述した最終的なデジタル設計図であるGDSファイルをGFに提供するところから始まる。GFはそのデータを使い、ウエハー製造に用いるマスクを作製する。同氏は「GDSがいったんGFに提供されれば、それは完全に欧州の手に委ねられる。当社の欧州拠点のサーバで保管されることになるのだ」と述べる。

 しかしそれは、広範な半導体エコシステムの全ての要素が欧州製のものになるという意味ではない。その最も明確な事例がEDAだ。Horstmann氏は、設計ソフトウェアをMicrosoft Wordになぞらえて、「プログラムは外部ベンダーから提供されるものかもしれないが、ドキュメントはユーザーのものであり、保護できる」と説明する。この違いは非常に重要だ。なぜなら、半導体設計は、少数の有力なEDAベンダーに依存していて、その中心は米国のSynopsysとCadenceだからだ。ただし、欧州資本の例外としてSiemens EDAが存在する。

 製造現場にも、これと同じ考え方が当てはまる。GFのドレスデン工場は、ASMLのリソグラフィ装置をはじめとする欧州製の装置を使用しているが、欧州以外のサプライヤーのシステムにも依存している。信頼性あるフローの焦点は、欧州製品のみのツールチェーンを構築することではなく、機密設計データやマスクの取り扱い、ウエハー処理などを、確実に欧州の管理下で維持することにあるのだ。

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