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メモリ市場が大爆発 「5年の壁」を乗り越えられるか湯之上隆のナノフォーカス(93)(3/4 ページ)

» 2026年07月07日 11時00分 公開

このブームはいつまで続くのか――歴史が示す「5年の壁」

 ここで、誰もが抱く最大の疑問に向き合いたい。すなわち、「このAIブームによる成長は、一体いつまで続くのか」という問いである。

 これを考えるヒントが、メモリ市場の長い歴史の中にある。図11は、1991年以降のメモリ市場の前年成長率を、35年近くにわたって示したものである。このグラフには、半導体産業が経験してきた数々の浮き沈みが刻まれている。

図11 メモリ市場の前年成長率 出所:WSTSのデータおよびWSTSの2026年春季半導体予測値を基に筆者作成 図11 メモリ市場の前年成長率[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータおよびWSTSの2026年春季半導体予測値を基に筆者作成

 1995年のWindows95発売による特需、2000年のITバブルとその崩壊(筆者はこの大不況により日立から早期退職勧告を受けた)、2017〜2018年のメモリバブル、2008年のリーマンショック、2020年以降のコロナ特需―。半導体業界は、これまで好況と不況を、まるでジェットコースターのように激しく繰り返してきた。

 ここで注目すべきは、個々の山の高さではなく、プラス成長が連続して続いた「期間の長さ」である。図11を丹念に追っていくと、ある重要な事実が浮かび上がる。メモリ市場の前年成長率がプラスを維持し続けたのは、過去のどの局面においても、最も長い場合でも5年が最長だった。それを超えて6年、7年とプラス成長が続いた例は、過去35年間に一度たりとも存在しない。

 なぜ5年で頭打ちになるのか。メモリ市場には、需要の盛り上がり→価格高騰→各社の増産投資→供給過剰→価格暴落、という「シリコンサイクル」が宿命的に組み込まれているからである。

 好況が続けば必ず各社が設備投資に走り、やがて供給が需要を上回り、価格が崩れる。これは、メモリという製品の本質に根ざした、避けがたいメカニズムなのだ。

 今回のAIブームによるメモリ市場の本格的な上昇局面は、2023年の底から立ち上がり、2024年に本格化したと考えられる。歴史的なパターンに従えば、最も長く続いたとしても、2028年で終わることになる。場合によっては、2027年で頭打ちになる可能性すらある。

 「今回は違う」「AIは特別だ」という声は必ず出てくるが、過去のあらゆるバブルの渦中でも、同じセリフが繰り返されてきたことを忘れてはならない。

山が高ければ、谷は深い

 そして、半導体業界の歴史が教える、もう一つの厳然たる法則がある。それは、「山が高ければ高いほど、その後の谷は深くなる」ということだ。

 再度図11を見て頂ければ、この法則は一目瞭然である。ITバブルでは2000年に前年比+50%超の高い山を築いたが、その直後の2001年には−49.5%という奈落の底へと真っ逆さまに転落した。2017〜2018年のメモリバブルでも、+60%超の山の後に、2019年には−33%という急落が待っていた。好況の絶頂が高ければ高いほど、その反動としての不況は深く、そして長くなるのが、この業界の常である。

 ここで、あらためて今回のAIブームを振り返ってみよう。前年成長率285%という「山」は、過去のどのバブルとも比較にならないほど高い。ITバブルやメモリバブルの山が「丘」に見えてしまうほどの、前人未到の高さである。

 この法則を当てはめれば、結論は自ずと導かれる。前例のない高さの山を築いた今回のブームの後に訪れる「谷」は、これまで半導体業界が一度も経験したことのない、想像を絶するほど深く、厳しいものになる可能性が高い。2027〜2028年以降に予測される不況は、生半可な備えでは乗り切れない、極めて過酷なものになると覚悟しておくべきだろう。

メモリメーカーの株価高騰と「10億りびと」

 足元では、メモリメーカーの株価が軒並み高騰している。価格上昇によって収益が爆発的に増大しているのだから、当然と言えば当然だ。

 象徴的なのが、2026年6月28日に日本経済新聞が報じた、キオクシアにまつわるニュースである。同社の株価上昇により、保有株の含み益が10億円を超えた関係者――いわば「10億りびと」が、600人も誕生したというのである。業界全体が、かつてないほどの祝祭ムードに包まれている。

 しかし、ここで冷静になる必要がある。株価とは、未来への期待を映す鏡である。そして、その期待が高すぎるとき、現実が少しでも期待を下回れば、株価は一気に崩れる。

 山が高ければ高いほど、谷は深い――。この法則は、市場規模だけでなく、株価にも等しく当てはまる。バブルの絶頂で生まれた「10億りびと」が、不況の到来とともに資産を大きく減らすという光景は、過去のあらゆるバブルで繰り返されてきた。

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