東京科学大学の研究グループは、“分子ゆらぎ”を制御した新たな「ポリイミド絶縁材料」を開発するとともに、この材料を用いて高周波誘電損失を低減することに成功した。6G(第6世代移動通信)やAI半導体を支える高周波絶縁材料として期待される。
東京科学大学物質理工学院材料系の早川晃鏡教授や安藤慎治教授、高橋陸助教、佐子奈津子研究員らによる研究グループは2026年7月、“分子ゆらぎ”を制御した新たな「ポリイミド絶縁材料」を開発するとともに、この材料を用いて高周波誘電損失を低減することに成功したと発表した。6G(第6世代移動通信)やAI半導体を支える高周波絶縁材料として期待される。
生成AIや自動運転などの普及に伴い、高速で大容量の通信を可能にするギガヘルツ帯の高周波信号が注目されている。ただ、周波数が高い電気信号は、半導体パッケージなどで用いられる絶縁材料の中で、信号エネルギーが熱として失われやすい。この原因は分子の揺らぎと密接に関係しているといわれている。中でも高分子材料は、湿度が高い環境だと高分子鎖の揺らぎが大きくなり、誘電率や誘電正接が劣化する。
そこで研究グループは、湿度変化に強いポリイミド絶縁材料の開発に取り組んだ。ここで注目したのが、ダブルデッカーシルセスキオキサン(DDSQ)である。ケイ素と酸素からなる、かご型骨格を持つ有機−無機ハイブリッド構造となっており、低分極性と自由体積制御の両立が期待できるという。
今回の研究では、DDSQの側鎖にシクロヘキシル基置換DDSQ(C-DDSQ)を用いた。疎水性の高いシクロヘキシル基を導入することで、水分子吸着による「高分子鎖ゆらぎ」を抑え、湿度が高い環境下でも安定した誘電特性を実現できた。
さらに研究グループは、C-DDSQを主鎖に含む半芳香族ポリイミドを合成し、大面積の自立フィルムを形成した。このポリイミドフィルムを用い、10GHzと20GHzの周波数帯における誘電特性を調べた。この結果、従来の芳香族ポリイミドに比べ、低い誘電率(2.57@10GHz)と誘電正接(0.0019@10GHz)になることを確認した。特に、高周波領域における分極由来の「高分子鎖ゆらぎ」を効果的に低減させられることを実証した。
相対湿度範囲が10〜60%における誘電特性も評価した。C-DDSQを導入した半芳香族ポリイミドは、従来のポリイミドに比べ、湿度変化に対する誘電率と誘電正接の変化が極めて小さく、湿度安定性に優れていることが分かった。また、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)で、ポリイミド内部の水分子吸着量を調べた。これにより、C-DDSQを導入した系では、従来材料に比べ水分子の取り込み量が極めて少なく、水分子由来の「高分子鎖ゆらぎ」が抑えられていることが明らかになった。
研究グループは今後、半導体パッケージ材料や高周波基板への実装を見据えて、微細加工性や接着性、長期信頼性などの評価に取り組み、早期実用化を目指す。
次世代チップ積層に関する3つの基盤技術を開発
先端ロジック半導体のゲート絶縁膜を極限まで薄膜化、LSTC
光で情報を書き換えられる磁気メモリ材料を開発
量子コンピュータ開発で天然シリコンが利用可能に、東京科学大
シリコン材料で量子ビットを高精度に制御、日立
光らない結晶を、効率よく光る結晶材料に変える半導体材料Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング