日立製作所は、ノイズが多い環境でも量子ビットを安定動作できる制御技術を東京科学大学と共同開発した。シリコンを用いた量子ビットにマイクロ波を連続照射し、その位相を制御することで実現した。
日立製作所は2026年2月、ノイズが多い環境でも量子ビットを安定動作できる制御技術を東京科学大学と共同開発したと発表した。シリコンを用いた量子ビットにマイクロ波を連続照射し、その位相を制御することで実現した。
量子コンピュータの実用化に向けて、シリコンを用いた量子ビットは大規模化に適した方式として注目されている。ところが、一般的なシリコン材料には極めて微量の29Si同位体が含まれている。これによって生じるノイズの影響で量子状態が乱れやすくなり、量子ビットの状態を長い時間保てないという課題があった。
日立はこれまで、マイクロ波を連続的に照射し、ノイズ耐性を向上させるConcatenated Continuous Drive(CCD)技術を研究してきた。さらに今回はマイクロ波の位相を制御することで、安定した量子操作が可能なことを実証した。
具体的には、量子ビットにマイクロ波を連続照射し、ノイズの影響を受けにくい「ドレスト状態」とした。そして、マイクロ波の位相を時間的に変調することで、より安定した「二重ドレスト状態」を形成した。連続照射と位相変調を組み合わせる新たな制御方式を開発したことで、外部からのノイズが平均化され、誤差が蓄積されにくくなったという。
この結果、29Si同位体に由来するノイズや、マイクロ波強度の変動に伴う制御系ノイズの影響も受けにくくなる。さらに、位相変調を精密に制御すれば、量子計算に必要な基本操作を高い精度(ゲート忠実度)で実行できることを確認した。
Ramsey測定によるコヒーレンス時間は0.14マイクロ秒(μs)から40.7μsへと、約280倍に向上した。スピン回転の安定性を示すQ値は、2.2から25.0に高まった。これにより、環境ノイズの影響を受けず高品質の量子操作が可能となった。さらに、単一量子ビットのゲート忠実度は95%から99.1%となった。
今回の研究成果を基に日立は、東京科学大学や理化学研究所(理研)などと連携し、2027年のシリコン量子コンピュータのクラウド公開に向けて開発を加速させていく計画だ。
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