産業技術総合研究所(産総研)は、韓国・国立釜慶大学校と共同で、強磁性かつ高い導電性を実現する「鉄(Fe)−銅(Cu)−銀(Au)微小複合材料」を合成した。半導体テストソケット用材料として期待される。
産業技術総合研究所(産総研)マルチマテリアル研究部門のPark Kwangjae主任研究員と劉崢(Zheng Liu)上級主任研究員、平山悠介研究グループ長は2026年9月、韓国・国立釜慶大学校のKwon Hansang教授と共同で、強磁性かつ高い導電性を実現する「鉄(Fe)−銅(Cu)−銀(Au)微小複合材料」を合成したと発表した。半導体テストソケット用材料として期待される。
半導体検査工程では、半導体デバイスとテスターを電気的に接続するため「半導体テストソケット」が用いられる。従来のエラストマー型半導体テストソケットでは、平均粒径が20〜50μm程度のニッケル(Ni)または貴金属めっきを施したNiの粉末を、導電性フィラーとしてエラストマー内に分散させていた。今回は、半導体デバイスのさらなる微細化や多ピン化に対応できる材料の開発に取り組んだ。
今回の研究で注目したのは、強磁性を有し機械的特性にも優れたFeだ。FeとCuおよびAgを1つの粉末中で複合化したFe-Cu-Ag複合粉末を開発した。原料粉末中の質量比は3対5対2とした。ただ、これらの金属は固体状態だと混ざりにくい。そこで今回は、非固溶系金属という特長を生かしながら、Feの磁気応答性と機械的特性、CuとAgの高導電性を単一粉末中で発現できるよう、複合粉末の合成を行った。
具体的には、液化金属を噴霧・急速冷却する「ガスアトマイズ法」と、金属蒸気を急速冷却する「熱プラズマ法」を用いてFe-Cu-Ag複合粉末を合成した。ガスアトマイズ法を用いると、平均粒径が50μm程度というマイクロサイズのFe-Cu-Ag複合粉末を得ることができた。熱プラズマ法では、平均粒径が100nm程度というナノサイズの複合粒子を形成できたという。
作製したFe-Cu-Ag複合粉末の特性を評価した。マイクロサイズのFe-Cu-Ag複合粉末は、Ni粉末(平均粒径50μm程度)に比べ、荷重に関係なく高い電気伝導率となった。ナノサイズのFe-Cu-Ag複合粉末でも、Ni粉末(平均粒径5μm程度)に比べ高い電気伝導率を示した。
半導体テストソケット用フィラーとして重要な項目である「磁気特性」と「機械的特性」の評価も行った。飽和磁化は従来のNi粉末が約57emu/gだ。これに対しFe-Cu-Agマイクロ粉末は63emu/gであり、Fe-Cu-Agナノ粉末は56emu/gとなった。Ni粉末と同等レベルの磁気特性が得られたのは、強磁性を有するFeが寄与したとみている。
機械的特性については、ビッカース硬度を調べた。一般的なNi粉末のビッカース硬度は約100〜110HV(0.98〜1.08GPa)である。今回開発したFe-Cu-Ag複合粉末は127HV(1.25GPa)となり、Ni粉末と同程度の機械的強度を有することが分かった。
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